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河合塾フォーカス

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~一人ひとりの個性を伸ばす、枠にはまらない無限の教育~|22|「生きる力」を育んで50年、ドルトンスクールが大切にすること

2024年1月に名古屋校新校舎が開校し、ますます充実した環境で子どもたちの成長をサポートするドルトンスクール。
今回は具体的なプログラムから大切にする価値観を紐解きます。2024年1月30日公開

予測不能な時代では、多様な人たちが協動しながら、自主的に考え創造する力が不可欠です。約50年にわたって、この力を重視した「ドルトンプラン」を実践し、多くの卒業生を世に輩出してきたドルトンスクール。
今回は、独自のカリキュラムの一部をご紹介するとともに「大切にする価値観」について、名古屋校の前校長で、現在は相談役の安積充さんと担当する先生方にうかがいしました。

一人ひとりの個性を伸ばすドルトンプランとは?

安積さん

安積さん:河合塾学園ドルトンスクールは、1才~12才を対象とした幼児・学童の教育機関で、1976年にニューヨークのドルトンスクールと提携して以来、半世紀にわたり幼児や小学生の教育に携わってきました。
約50年、変わらずに大切にするのは「一人ひとりの個性を伸ばす教育」。子どもの興味関心・発達に応じて、一人ひとりの能力を切り拓きます。

ドルトンプランの理念は「自由」と「協同」です。
「自由」は自分の興味・関心のあるものを選び取れること。「もっと深く知りたい」という好奇心や探究心を追求できることを意味します。
「協同」は、他者と力を合わせて知恵を出し合うこと。他者との協同を通じて一人では気づけなかった考えにたどり着く、または新たな創造につながります。

未就学児対象のファーストプログラムでは、考える力を育む「ラボ学習」、生徒の興味を広げ関心を深める「プロジェクト型学習」、遊びに没頭し創造性を高める「フリープレイ」、その他に音楽・体操・アート・English・サイエンス&プログラミングなど「専門的な学習」を組み合わせてカリキュラムがつくられます。

今回は、これらのカリキュラムから「ラボ学習」「プロジェクト型学習」「専門的な学習」の3つをご紹介しつつ、指導で大切にしていること、ドルトンの価値観をご案内します。

①ラボ学習~80種類以上の独自教材で考える力を伸ばす~

ラボの教材はすべて手作りで長年受け継がれている

安積さん:「ラボ学習」は論理的な思考や判断力を高める授業で「ギルフォードの知能構造論」という理論に基づいています。思考力を高めるベースとなる「図形」「記号」「意味」という3つの材料に対して、それぞれ「認知」「記憶」「集中思考」「評価」「拡散思考」といった働きを絡め、独自のプログラムや教材を年齢ごとに80種類以上用意しています。教員の指導が行き届く少人数で、個々が無理なく能力を高められるようレベルに幅を設けた教材で行います。

たとえば、写真は「図形」の「拡散思考」を高める教材です。入口から出口までの進み方は、8枚のカードを並び替えることで、複数パターンにおよびます。このパターンをどれだけ考えられるか試行錯誤することで、柔軟な思考力を育みます。

次の写真は「意味」の「評価」力を高める教材で、一枚一枚の絵カードの内容を考えカードを分類します。
ここで重要なことは、「いかに脳をフル回転して考えるか」。子どもたちが一生懸命頭を使って、こうでもない、ああでもないと考えている場面こそ、脳が働いている大切な時間なのです。
そこで身につく論理的に考える力や創造力、そして物事に取り組む集中力や持続力は、将来社会で生きるために必要な力です。

―授業で大切にしていることは?
子どもたちが頭を使い、脳を働かせるには、面白い教材・授業の仕掛けが必要です。子どもたちが楽しめなければ、持続して「考える力」も身につきません。そのため、教材の多くは手作りで制作し、教員は一方的に教えるのではなく「どのような場面でどのような声掛けをするか」を大切にしながら授業に臨んでいます。
また、指導は「できたか・できなかったか」ではなく、一人ひとりの能力や特性に応じてサポートします。一生懸命に試行錯誤しているときはじっと見守り、行き詰ったときも正解を伝えるのではなく、子ども自身に気づきが持てるような声掛けをし、自己肯定感を育んでいきます。

②プロジェクト型学習~子どもたちの探究心や想像力を大切に~

東京校の藤野先生。最近は古代エジプトや世界遺産をテーマにPBLに取り組んだ。

ープロジェクト型学習について東京校の藤野先生(写真:右下)にうかがいました。

藤野先生:「プロジェクト型学習(PBL)」は、一つのテーマに対しScienceやMath、Artといった多角的なアプローチで教科横断的に学びを広げる授業で、近年注目されているアクティブラーニング型の手法を用います。

扱うテーマは、社会のできごとや季節行事など子どもたちの興味や幼児期ならではの発達段階に応じて柔軟に決定します。
低年齢では五感でダイレクトに感じられるテーマで「これってなんだろう?」や「好き」という気持ちから理解を深めるのに対し、年齢が上がると「恐竜」「宇宙」「世界遺産」など幅広いテーマへ発展するのも特徴です。

一例として水族館見学をきっかけに年長クラスで実施した「テーマ:さかな」の活動を紹介します。
1. 自分の好きな魚を見つけ選ぶ
2. 選んだ魚の住む場所や特徴を図鑑やインターネットで調べる(Science)
3. 紙粘土や絵の具を利用し、調べた魚を立体的に再現工作する(Art)、紙短冊をつなげ魚の実寸大を体感する(Math)
4. 空想の魚をデザイン(Art)、デザインした魚が登場するお話しリレーを考える(Language)
5. 「水族館を開こう!」と題して、クラスで必要な準備を考え分担し発表(sharing)
ここまでが一つの流れとしてセットされ、身近なテーマから思考や感性がリングのようにつながり、他分野にも関心を向け、さらに理解を深めます。
一人ひとりの興味・関心から主体的な選択を促すだけでなく、疑問を調べ、模倣や再現を通して、情報収集力や認知力を育成します。さらに創造的に発展させ、グループ活動ではコミュニケーション能力や協同性に働きかけます。

―授業で大切にしていることは?
幼児期は画一的な枠組みにはめこむのではなく、いかに自由に発想しできるか、または、もっと知りたい!という好奇心を満たせるかを大切にしています。
ドルトンスクールでは「joy of learning」という考え方があり、遊びと学びのボーダーがなく、好きなことを主体的に深められます。その活動には、大人が思う以上の探究心に驚かされることもあります。
また、「シェアリング」と呼ばれる発表の時間では、意思表現力や他者との違いを理解・尊重する力が育まれていることを実感します。当然意見が割れることもありますが、スムーズにいかない経験こそ次回へ活かす良い機会。大いに失敗してチャレンジしてほしいと思っています。

③専門的な学習~多彩な科目で子どもたちの可能性を広げる~

アートや音楽の実際の取り組み

「専門的な学習」は「アート」「音楽」「English」「体操」「サイエンス&プログラミング」をそれぞれ専門の先生から学ぶ授業です。
「アート」を担当する曳地先生と「音楽」を担当する酒井先生にうかがいました。

曳地先生(アート):クラスでは対象をよく観察し、色や質感など子どもたちの感性を楽しみながら表現することをめざします。たとえば「パイナップル」を題材にした際は、制作前に「ごつごつしている」「チクチクして痛い」「葉っぱのにおいはどう?」など香り・重さ・感触を楽しみました。絵の具で描くと、本物そっくりに再現する子もいれば、カラフルに自分の好きな色を追求する子どももいます。混色を楽しむという意味ではどれも肯定されるもので、なによりも本人が納得することが大切です。

また、さまざまな画材を用意して、さらに同じ画材でも多様なアプローチで質感の変化を楽しみ、新たな発見を促します。
年齢が上がると、立体作品やグループ協同制作など難しいことにもチャレンジしていきますが、ベースにあるのは表現を楽しむこと。こうした幅広いアート体験が、一人ひとりの創作意欲と充実感につながることを願っています。
――――――――――――――
酒井先生(音楽):聴く力を育て、自分なりの表現を楽しむことが授業の狙いです。「歌」「楽器」「リトミック」「鑑賞」にバランスよく取り組み、段階的に音の高低や強弱、速さなどの変化を楽しみます。年齢が上るとグループ活動や自発的な創作表現も充実させます。
たとえば、年長クラスでは歌の意味やストーリーについて子どもたちと対話し、歌い方や使う楽器の表現方法を考えます。その曲ごとの感じ方は子どもによって異なりますが、どれも否定しません。そういう考え方もあるんだ!というふうに、主体的な発見や多様な捉え方を大切にしています。
また、音の違いが分かりやすく、細部に意識が向けやすい『クラシック音楽』を取り入れているのも特色の一つ。
オペラなどの特定のジャンルを除き、クラシック音楽には歌詞が無いので曲のイメージを膨らませやすく、タイトルや歌詞を考えるなど創作活動にもチャレンジしています。
音楽における表現に正解は無いので、自由な発想で楽しみ、さらに大人になっても音楽を好きでいてほしいという気持ちで授業を行っています。

半世紀、幼児教育の最先端を走ってきたからこそ言える、無限の創造教育

ドルトンスクールでの様子

―最後に、ドルトンスクールで育む能力についてうかがいました。

安積さん:ドルトンスクールでは非認知能力・認知能力のどちらも大切にし、バランスよく取り組みます。
たとえば、縄跳びを飛ぶとき「何回飛べたか?」と定量的に測れる力は認知能力といえますが、一方で「どうやったらうまく飛べるようになるか?」と考え工夫する、または失敗しても何度もトライする力は、非認知能力といえるでしょう。
結果として数値で達成できなかったとしても、思考力や粘り強さや集中力は身についたら、一生もの。困難が訪れたときに応用的に生かすことができます。こうした力は日ごろの遊びも含めた活動や体験を繰りかえし行うことで身につけられます。

このような「生きる力」を幼少期から育む教育を、約50年にわたって実践してきましたが、グローバル化やデジタル化が急速に進む現代こそ、この「生きる力」が求められているように感じます。
予測不能で多様化する社会で子どもたちが未来を切り拓いていくために、従来の枠や型に当てはめず、主体的に探究し、ものごとの本質に突き進む力は非常に重要で、こうした力を身につけてほしいと思っています。

―ドルトンスクールの卒業生も増えてきました。
卒業生は、医師や弁護士、研究開発などのスペシャリストとなった人、新たなビジネスを作り出す人もいれば、アートやスポーツなどあらゆる分野で活躍している人もいます。
卒業生の方からは「子どもの良いところを伸ばしてくれる」「自由な発想を大切にしていて、無ければ作れば良いと教えてもらった」「正解にたどり着くまでの試行錯誤している時間が楽しかった」という声をいただいており、現在のご職業の原点になったというお声も数多くいただいています。

今では、ご自身も幼少期に通われた経験を持つ保護者の方が、自分のお子様を通わせてくださるケースが非常に多くあります。長年のドルトンスクールの理念や取り組みに共感いただいていることは、教育に携わる者としてこれほど嬉しいことはありません。

“Joy of Learning”を身につけた子どもたちは、予測不能な未来を自分たちの手で明るく切り拓いてくれるものと確信しています。

トピックス河合塾グループの取り組みや関連するニュースを紹介します。

名古屋校 新校舎外観

ドルトンスクール名古屋校が新校舎に!ひらかれた空間で創造力UP!

\名古屋市千種区に名古屋校の新校舎が完成!2024年1月から新校舎で授業をしています/
ドルトンプランには「ハウス(家庭的な教室)」という考え方があります。子どもたちにとって「ハウス」は安全で安心できる場所であること。そしてそこでは臆することなく発言し、失敗を恐れることなく何度でもチャレンジができ、必ずあたたかく見守ってくれる教員がいることが前提にあります。
そうした「ハウス」をよりいっそう体現できるよう、新校舎ではなにより「ひらかれた空間づくり」を重視しました。

名古屋校 新校舎の園庭や教室

名古屋校新校舎のこだわり|未来に活躍する子どもたちが、楽しく学び成長できる総合的な教育を実践する学校

\1才から小学生までともに学べる、こだわりの空間づくり/
・どの教室も外から見えやすく、安心して過ごせる開放的な各教室
・子どもたちが互いに協同しながらワークするのに適した、目が届きやすく行き来しやすい教室づくり
・教室・廊下には余白を残しつつ、生徒の「創造性」と「非認知能力」を育む掲示・展示スペースを設置
・少人数ワークや異学年交流など、目的別に人数に合わせて仕切り等で柔軟に広さを変更できる教室を多数設置
・テラスや庭が一続きになり、屋上には畑も設け、季節に応じた体験的な活動もしやすく!

河合塾学園ドルトンスクール