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「私と河合塾」-OB・OGが語る河合塾-: Vol.2 (2008年6月公開)

これからの時代は大きなチャレンジが待っている。
大学合格をゴールにしないで
目標を高く持って新しい社会を築いてほしい

独立行政法人 国立環境研究所 温暖化リスク評価研究室長
江守 正多さん

高校グリーンコース

独立行政法人 国立環境研究所 温暖化リスク評価研究室長 江守 正多さん

教科の本質がどこにあるかを教えてくれた河合塾の授業

・・現在、どのような研究をなさっているのですか。

江守 世界最大級のコンピュータを使って、地球温暖化の将来予測をシュミレーションしています。このまま人類が二酸化炭素を排出し続けていくと、地球の温度がどれくらい上昇し、地球がどのような状態になるのかを、物理学的手法によって予測するわけです。シミュレーションによると、現状のままであれば50年、100年先には地球の平均温度は2度から3度も上昇し、海水面上昇や生態系の変化、酷暑やハリケーンなどの激しい異常気象などが起こるとされています。この温暖化を止めるために、世界の首脳レベルが、2050年までに二酸化炭素の排出量を少なくとも半分以下にしなければならないと真剣に話し合っているところです。地球温暖化という人類にとって重要な課題に科学の立場から貢献できるところに、この研究の意義を感じています。

・・そのような研究をしよう、あるいは科学者になろうと、子どもの頃から考えていたのですか。

江守 子どもの頃は将来についてあまり考えなかったですね。ただ、数学や理科など理系の科目が好きで、一度公式などを覚えれば、同じような問題は間違いなく解けるというような自信を持っていました。逆に、暗記するのは苦手で、社会などの成績は芳しいものではありませんでした。そのようなことから、漠然と理系の能力を活かした道に進むのではないかと考えていました。研究職に就こうと思ったのは、ずっと後の話で大学時代です。

・・東大をめざそうと思った、きっかけは何ですか。

江守 恥ずかしい話ですが、大学で現在行っている研究に出会うまでは「自分の進む道」というものはしっかりと考えたことはありませんでした。大学受験においても、漠然と「国立大学に進学できればいいな」と思っていた程度です。ただ、私の出身校は毎年数人の東大合格者を出していたので、高校で成績上位であれば、東大合格も夢ではないと考えていました。具体的に東大受験を決めたのは、河合塾の東大オープン模試でA判定が出て「これならいけるのではないか」と思ったからです。

・・受験勉強はどのように進めたのでしょうか。

江守 高校の授業はどれもしっかりと聞きました。高校1、2年の時は授業中心で、あとは定期試験の直前に集中的に試験勉強をする程度でした。高校3年で初めて大学受験というものを意識し、河合塾の駒場校で毎週土曜日に開講していた「東大オープンセミナー」を受講したのです。実家が神奈川県ですので、駒場まで通学するのは大変でしたが、オープンセミナーで勉強を続けたことで大学受験への自信を深めることができました。このほか、河合塾では夏期講習、冬期講習を受講しました。共通一次試験の結果も良好だったので、国立大学では東大と京大を、私立大学では早慶を受験。いずれも合格しましたが、東大は最後まで自信が持てませんでしたね。

・・河合塾の授業をどのように感じていましたか。

江守 河合塾で物理を教えていただいていた先生と、この間、学会で偶然にお会いしてビックリしました(笑)。その先生は河合塾の講師の後に、私と同じ分野の研究者になったわけです。先生の講義は、単に入試問題を解くといった受験勉強だけでなく、問題に隠されている物理の考え方というものを教えてくださいました。数学など他の先生も、同じような教え方が多かったですね。予備校の授業というと受験テクニックを連想しがちですが、河合塾は学者然とした先生が多く、その教科の本質がどこにあるかを垣間見せながら教えてくださったという印象です。学会で物理の先生と研究者としてお会いした時は、妙に納得したものです。

大学時代のチューター経験が私のクラブ活動や社会勉強の場

・・東大入学後に、河合塾のチューターをなさっていますね。

江守 河合塾ではチューター制度を導入していて、高校グリーンコースでは、現役の大学生が講師の補助役として、塾生をサポートしていますよね。私が通学した東大オープンセミナーでチューターのお世話になっていたわけですが、合格すると私が後輩の世話をすることになったのです。大学1、2年の2年間チューターを務めました。思い出深いのは、授業終了後に数十人の塾生を前に大学受験のトピックスなどをチューターが語る「チュートリアル」です。授業終了後ですから、話がつまらないと塾生は帰ってしまいます。何をテーマにするか、どのように話を展開すればよいか、前日から考えたものです。環境問題が注目されていることもあって、私は現在、年に40回以上講演を行っていますが、人前で話す度胸を含めて、チュートリアルでの経験が大変に役立っています。

・・今振り返ると、チューター経験はどのような意味を持っていますか。

江守 チューターには自治権が結構認められていて、新人採用などもチューターに任されていましたし、塾生サポートのプランを自分たちの手で企画することもできました。そのような活動を通じて多くのチューター仲間と友情を深めたことは貴重な体験でした。チューター仲間とは、今でも時々会って当時の話などをしています。私は大学でサークル活動などを熱心にしたわけではありませんが、チューターの活動は真剣でした。河合塾でのチューター経験が私のクラブ活動であり、社会勉強の場であったように思います。

・・勉学の傍ら河合塾でチューターを務めながら東大駒場キャンパスで2年間を過ごした後、教養学部基礎科学科に進まれました。学科選択の理由は何ですか。

江守 高校の時にチェルノブイリの原発事故が起こり、その後、原発論議が活発に行われました。私は論理的な人間だと自分自身で思っていたのですが、テレビで原子力発電の正否を論ずるディスカッションを聞いていると、どちらの意見も正しいように思えてしまう。それなら、自分で調べてみようと考えたわけです。本来なら、原子力工学系の学科に進めばよいのですが、そうすると原発推進派に取り込まれてしまうような気がして…(笑)。より根本から考えたいと思い、教養学部基礎科学科を選んだのです。

社会のシステムが根本から変わる「面白い」時代に生きている

・・基礎科学科で地球温暖化の研究を始めたのは、どのような経緯ですか。

江守 原発論議は地球温暖化に深く結びついています。地球温暖化の勉強しているうちに、本当に地球は温暖化しているのかどうか、温暖化しているのならどれぐらいのスピードなのだろうか、などに疑問を持ちました。それを調べようと、国立環境研究所に出入りするようになったのです。当時はコンピュータで温暖化を予測する研究プロジェクトがスタートしたばかりで、先輩研究者のお手伝いをしているうちに、本格的な研究の道に進むことになりました。

・・草創期からコンピュータによる温暖化予測の研究に携わっていたわけですね。そうした研究者の立場から、大学受験に向かって励んでいる後輩たちへのアドバイスをお願いします。

江守 初めに語ったように、地球温暖化を阻止するために人類は協力して二酸化炭素の排出量を軽減していかなければなりません。これからは石油や石炭などの化石燃料に頼らない文明を築かなければならないのです。それを悲観的にとらえる人もいますが、私は「面白い時代に生きている」と考えています。なぜなら、二酸化炭素の排出量を半減するということは、社会のシステムを根本から変えることだからです。ライフスタイル、産業構造、何が幸せかという価値観などすべてが変わっていかなければ、地球温暖化は阻止できません。自然科学だけでなく、社会科学、人文科学を含めたすべての英知が必要です。そのダイナミズムが面白い。それは、私たち自身の手で新しい時代を築くという、ものすごいチャレンジであるわけです。そして、それが成功するかどうかは若い人たちの双肩にかかっています。受験生の皆さん、大学合格をゴールにしないでください。その先には大きなチャレンジが待っています。そのチャレンジにどのようにかかわるかという大きな目標を持って、勉強に励んでほしいと思います。

江守 正多

Profile

江守 正多 (Shota Emori)

1970年 神奈川県生まれ
1992年 東京大学 教養学部 基礎科学科第二卒業
1997年 東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 博士課程修了
1997年 国立環境研究所 大気圏環境研究部 大気物理研究室 研究員
2001年 国立環境研究所 大気圏環境研究領域 大気物理研究室 主任研究員
2001年 地球フロンティア研究システム モデル統合化領域 研究員(出向:2004年まで)
2004年 英国気象局 ハドレーセンター 客員研究員(長期出張:2005年まで)
2005年 国立環境研究所 大気圏環境研究領域 大気物理研究室 室長
2006年 国立環境研究所 地球環境研究センター 温暖化リスク評価研究室 室長
海洋研究開発機構 地球環境フロンティア研究センター グループリーダー(2004年より)ならびに
東京大学 気候システム研究センター 客員准教授(2006年より)を兼務

高校グリーンコース

高校生を対象とした志望大学現役合格を目標とするコース。学力や学習状況にあわせて受講できるカリキュラムで、高3になるとより実践的な講座も用意しています。

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