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「私と河合塾」-OB・OGが語る河合塾-: Vol.5 (2008年9月公開)

  • 会社経営・起業家
  • 教育・研究者
  • 専門学校トライデント
株式会社エデュシーズ 代表取締役/児童英語講師 水 万里子さん

トライデントとの出会いによって<br />自分なりの「人生のテーマ」が見つかり<br />目標に向けて学び続ける姿勢が養われました。

  • 株式会社エデュシーズ
    代表取締役/児童英語講師

    清水 万里子さん

    出身コース
    トライデント外国語・ホテル・ブライダル専門学校

最新の英語教授法を積極的に取り入れていたトライデント

・・英語に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか。

中学1年生の時に、アメリカの中学生とペンパル(文通仲間)になって、2週間に1回ほどのペースで文通していました。これがきっかけになって、英語でコミュニケーションを図るのが大好きになりました。職員室に通いつめて、英語の先生に、辞書と格闘しながら英語で話しかけたりしていました。

・・トライデント外国語専門学校を選ばれた理由は何ですか。

志望大学に不合格になり、両親の勧めに従って、トライデント(当時は名古屋外国語専門学校)に入学しました。トライデントの2年生の時に山岡多美子先生の児童英語教育ゼミに所属したことが、私の人生を変えたと言っても過言ではありません。このゼミでトライデントに併設されていた児童英語教室で教育実習を経験する機会が設けられていました。もともと子どもと触れ合うのが好きで、小学生の頃から、小学校教員をめざしていた私は、この教育実習をとても楽しみにしていました。けれども、実際に子どもに接してみると、自分の甘さ、実力不足を痛感しました。子どもに教えるのは簡単なことではない。というより、子ども相手だからこそ、よりハイレベルな英語力が求められるし、子どもにとってわかりやすい教授法を身につける必要があります。もっと児童英語教育について深く勉強したい。ここで夢と現実とのギャップ、自分の課題がはっきり見えたのです。その思いが現在の私の原点になっています。

・・そのほか、トライデントで印象に残っていることをお聞かせください。

ネイティブ教員が多く、英会話、英語劇など、実践的な指導が行われていました。定期的に「イングリッシュデー」が設定されていて、日本語を一言しゃべるたびに罰金を払う制度もありました。先生が罰金を入れる空き缶を持って巡回するのですが、けっこうたくさん罰金を徴収されたことも懐かしい思い出です(笑)。これは、授業中だけでなく、日常生活の中でもできるだけ英語を使う習慣をつけさせたいという配慮だったのだと思います。また、サジェストペディア(絨毯の上で、靴を脱いで、リラックスした状態で英語を学習するスタイル)など、最新の英語教授法もいち早く取り入れられていました。もちろん、当時は新しい教授法だとは知らなかったのですが、今、専門的に研究するようになって、斬新な教育体制だったことを再認識しています。情報処理、英文タイプなど、社会に出てから即、そのまま役に立つ実務能力を養う科目も豊富でしたね。

・・トライデント時代に海外研修も経験されたのですね。

ええ。約5週間、シアトルのコミュニティ・カレッジに行き、午前中は英語の授業、午後は街を散策しました。何よりも貴重な異文化体験になったのがホームステイです。アメリカの家庭では、たとえばランチにしても、いつ何を食べたいのかはっきり告げないと、何もしてもらえません。日本流の「あ・うんの呼吸」は通用しないのです。この経験によって、帰国後、自分から明確に主張し、アクティブに行動するようになりました。

30歳近くになってから大学・大学院に進学

・・トライデントを卒業後は、どんな仕事に就かれたのですか。

民間の英会話教室の児童英語教師を経て、21歳の時に地元で英語塾を開きました。経営は順調だったのですが、先ほど申し上げたように、もっとスキルアップを図る必要性を感じていたので、並行して民間団体の研修にも積極的に参加していました。半年間休業して、財団法人のインターンシップ・プログラムに応募し、ワシントン州のエレメンタリースクール(小学校)で、日本語教員を務めたこともあります。ここで、私が教えた子どもたちの日本語習得の早さ、発音の正確さを肌で感じ、日本の英語教育に欠けているものに気がつきました。また、最も思い出深いのは、ある子どもが、自分の名前を漢字にするとどうなるかと聞いてきたことです。早速適当な漢字を当てて、その意味を説明したところ、とても感動してくれました。その笑顔を見て、人の役に立つ喜びが芽生え、腰が座ったというか、子どもに教えることを生涯の仕事にしようという決意が固まったのです。そこで、帰国後、近隣の幼稚園、保育園などを訪ね、子どもたちに英語を教えさせてほしいと依頼して回りました。

・・自分で教える場を開拓していかれたのですね。

幸い、母校の保育園の園長先生が受け入れてくださり、現在でも続いています。正規の教育機関で教える立場になったのですから、やはり教員免許を取得しなければという意欲が生まれ、29歳で地元の短大に入学し、中学校の2種教員免許を取得しました。そうなると、もっと高度な学びへの欲求が高まり、大学に編入学して言語学を専攻するとともに、1種免許を取得しました。次いで、大学の通信教育を受講。念願の小学校教員免許を取得し、7年前から小学校でも英語を教えています。さらに、言語の専門性を追究したいという思いが募り、岐阜大学大学院教育学研究科カリキュラム開発専攻に進学し、小学校英語教育のトップランナーの一人である先生に師事しました。研究テーマに選んだのはCBA(コンテント・アプローチ)です。英語の授業で理科や社会などの内容を活用する教授法で、たとえば、バイブレーションを教える際に、単に振動という単語で覚えさせるのではなく、糸電話を見せて子どもたちがイメージしやすいように工夫し、その現象自体をバイブレーションとして認識させるのです。

・・2年前に(株)エデュシーズも設立されていますね。どんな目的で設置されたのですか?

2011年度からの新学習指導要領で、小学校に英語の学習が導入されます。早いところでは先行してすでに英語の授業がスタートしています。けれども、小学校で6年間英語を教えてきた経験から、現状のままで果たしてスムーズに導入できるのか、疑問も感じています。もっと教育環境を整える必要があるのです。特に重要なカギを握るのが、子どもにとって、英語の世界の扉を最初に開く役割を担う教員の資質です。それも、単に英語力を伸ばせばいいというものではなく、子どもへの英語教育はいかにあるべきか、その本質を理解し、いわば「教師魂」とも呼ぶべき情熱を持った教員を養成することが大切です。そこで、エデュシーズでは、英語教育の方法、手段、心根に関する研修を開催しています。併せて、海外の教育委員会と連携し、英会話教室の講師や、教員をめざす学生を対象とする海外研修も行っています。その他、私は、トライデントで『発達心理学』の講座を担当していますし、10月からは大学で教職課程の『英語科教育法』の講座、ならびにトライデントランゲージスクールで来るべき英語指導に不安を抱いている小学校教師向けの『小学校英語教師養成講座』も受け持つことになっています。

どの時点からでも目標に向けたスタートを切ることができる

・・今後の目標をお聞かせください。

子どもの英語教育に関するあらゆる場面で、最高の環境を構築する努力を続けていきたいと思っています。その一環として、ウェブの生活総合情報サイトAll About の中で「子供のための英語」のガイドを担当し、さまざまな情報を発信しています。このサイトには、学校現場のほか、ビジネス界からも情報が集まってくるとともに、たとえば、新教材を開発した会社から、どんな学校で活用するのが有効かといった相談も寄せられています。「最強の現場通」として、そうしたマッチング、ジャッジを含めて、今後もファシリテーター(促進者)の役割を果していきたいと考えています。

・・最後に、後輩たちへのアドバイスをお願いします。

月並みですが、まずは自分なりの夢、目標を定めることが大切です。水泳の北島康介選手は、ゴールした時、決して周囲の選手を見ようとはしません。電光掲示板でタイムを確認するだけです。他人と比較するのではなく、自分で決めた目標タイムだけを相手にしているわけです。志の高さが感じられるところであり、私もあの境地に達したいと思っています。そして、自分なりの目標が定まったら、それを達成するため課題を明確にし、一つ一つ解決していく努力を怠らないことです。お金がないとか、時間がないなんてことを言い訳にしたくない。それに長い人生、どの時点からでも目標に向けたスタートを切ることは可能です。私も、正直なところ、大学に不合格になった時は悲嘆にくれました。けれども、今振り返ってみると、トライデントで学べたからこそ、その後の人生を自らの意志で切り拓くことができたのだと思います。児童英語教育という人生のテーマが見つかり、また、それを達成するために学び続ける姿勢が養われたのです。
学びたいテーマがあれば、私のように30歳近くになってからでも、大学・大学院に行けばいい。その方が、必死で授業を聴こうとしますし、学びも深いものになります。その意味で、人生のテーマを見定め、夢に向かって学び続ける姿勢を養うことができたトライデントとの出会いに、私はとても感謝しています。

Profile

清水 万里子 (Mariko Shimizu)

清水 万里子(Mariko Shimizu)

岐阜県生まれ。名古屋外国語専門学校(現・トライデント外国語・ホテル専門学校)卒業後、英語塾を開業するかたわら、岐阜女子大学、岐阜大学大学院などで学ぶ。現在、幼稚園、小学校で英語を教えているほか、トライデント外国語専門学校講師、および今年10月から大学講師も務める。株式会社エデュシーズ代表取締役として、英語教員の研修やコンサルタント業務にも携わっている。

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