このページの本文へ移動 | メニューへ移動

「私と河合塾」-OB・OGが語る河合塾-: Vol.10 (2009年2月公開)

  • デザイン・アート関連
  • 専門学校トライデント
イラストレーター 岡田 みゆきさん

卒業制作で取り組んだテーマを追い続け<br />名古屋市の「開府400年記念祭」イベントで<br />ライブペインティングにチャレンジ


  • イラストレーター

    岡田 みゆきさん

    出身コース
    トライデント デザイン専門学校

サンドアート挑戦、美術館巡りなどの多彩な教育プログラム

・・アートの世界をめざそうと思われたきっかけを教えてください。

物心ついた頃から、絵を描くのが好きで、小学校でも最も得意な教科は図工でした。もっとも当時は、授業の課題で出される神社や牛などの絵を描いていただけで(笑)、それほど個性的な作品だったわけではありません。高校で美術部に所属し、油絵コンクールで入賞したことから、自信がついて、もう少し本格的に絵を勉強したいという思いが強まっていきました。両親に相談したところ、「絵は趣味でいいじゃないか。絵の仕事で生活するのは無理に決まっている」と、猛反対されましたが、最後は自分の意志を通しました。

・・トライデントデザイン専門学校を選んだ理由は何ですか。

高校の担任の先生が、芸術系に進むのなら、特定の分野に凝り固まらず、できるだけ幅広く学んだ方がいい。トライデントなら、インテリア、グラフィック、雑貨、イラスト、マンガ、ゲームなどに関するバラエティーに富んだ学科が設置されており、カリキュラムも柔軟に履修できる体制になっているからいいのではないかと、勧めてくださいました。進路面談の前に、いくつかのデザイン専門学校の体験入学に参加していたのですが、私自身、最も好印象を持っていたのがトライデントでした。とくに、パソコンで画像を配置する体験授業は、それまであまり経験したことがなかっただけに刺激的でした。絵を描くのが好きなので、デザイン専門学校をめざそうと考えたわけですから、当初はイラストレーション学科を志望していたのですが、先生のアドバイスもあって、違う世界にも触れたいという気持ちが生まれ、グラフィックデザイン学科に入学しました。

・・実際に入学してみての印象はいかがでしたか。

期待通り、グラフィックの専門科目だけでなく、選択科目で日本画、版画など、様々な科目を履修することができ、視野が広がりました。

とくに印象的だったのが渡邉勝則先生の『アドバタイジングデザイン』です。中部国際空港「セントレア」、靴の「コンバース」、デジタルカメラなど、実在する企業の商品の宣伝ポスターを制作する授業でした。私は、自分なりに工夫したキャッチコピーにイラストを組み合わせた作品を制作しました。それまでは、感性のおもむくままに自由に描くだけでしたが、この授業は、商品の特性をアピールすることが要求されるなどある制約のもとに取り組むもので、そこがまた新鮮に感じられました。

岩井勝先生の『写真基礎』も楽しみな授業でした。与えられたテーマに沿って、街に出かけて撮影する授業で、現像まで自分自身で行いました。一部分だけを切り取ったり、接写で背景をぼかしたりすると、同じ場所でもまったく異なる印象になるところに、カメラの面白さがあります。この時に身につけた感覚は、イラストを描く際にも大いに参考になっています。

・・そのほか、思い出に残っていることはありますか。

トライデントは感性教育をとても重視しており、自由に表現力を高めるための特別プログラムが豊富に用意されています。例えば、1年次には、知多半島の海辺の砂浜でサンドアートに挑戦しました。6~8人のグループで、砂を使って巨大な立体物制作に取り組むプログラムで、私たちは、ちょうど七夕の時期だったので、織り姫と彦星、天の川をかたどった作品を徹夜で仕上げたこともなつかしい思い出です。作品の企画・制作からプレゼンテーションまでがセットの授業でけっこう大変でしたが、達成感を得ることができました。

また、2年次には、先生の引率で、東京の美術館や画廊巡りなどが組み込まれたデザイン研修にも出かけました。様々な芸術作品に触れることは、既成概念から脱皮する上で有意義だったと思っています。

卒業制作で‘オヤジ’を題材にした作品に取り組む

・・卒業制作は、どんな作品を作られたのですか。

B1サイズのパネル5枚に、‘オヤジ’が踊っている時代劇風のイラストを描きました。‘オヤジ’は、顔にシワがあって、表情に変化がつけやすいと思って選びました。時代劇風にしたのは、小さい頃に、祖父母と一緒に「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」などの時代劇を見ていたことが影響しているのかもしれません(笑)。先生方からは、動きや表情が生き生きしていると評価していただきました。この卒業制作が、その後の私の方向性を決めてくれた気がします。

・・卒業後の活動状況を紹介してください。

卒業後、デザイン事務所に就職したのですが、その会社が半年たらずで倒産してしまいました。途方に暮れて、卒業制作の時にお世話になった石澤広子先生に相談したところ、「若いうちは、いろんなことに挑戦した方がいい。別の就職先を見つけることに固執せずに、しばらくフリーでやってみるのも、いい勉強になると思うよ」と、温かく励ましてくださいました。この言葉で勇気が湧き、フリーで仕事をしていくことを決心しました。とはいえ順風満帆だったわけではありません。生活費を稼ぐために、ビジネスホテルの清掃など、アルバイトもたくさんやりました。アルバイトで忙しく、作品の売り込みに歩く時間的な余裕がなくなり、このままでいいのだろうかと、葛藤の日々が続きました。

転機が訪れたのは、卒業して2年目の名古屋まつりのポスターに採用されたことです。デザイン事務所からの依頼でしたが、実はその方は、卒業制作展覧会で私の作品を見てくださっており、色が鮮やかで劇画調のタッチが、このポスター(信長、秀吉、家康の三英傑を描く)にあうと考えて、声をかけてくださったそうです。

単なる自己表現の追求ではなく、見る人が楽しくなるような作品を作りたい

・・11月には、名古屋市の「開府400年記念祭」の400日前カウントダウンイベントで、ライブペインティングも行われていますね。

江戸時代、葛飾北斎が120畳の紙にダルマの絵を描いたという伝説にちなんで、120畳の和紙に、3日間かけて絵を描きました。下書きは、鉛筆では細すぎるため、コンテを3本重ねて行い、筆で主線をなぞっていきました。名古屋最大の繁華街である栄で、大勢の観客の前で描くので、とても緊張しました。けれども、こうした巨大なアートに挑戦することは、私にとっては夢の1つだったので、格別な達成感も得られました。この時に描いたのも、卒業制作以来の「‘オヤジ’シリーズ」です。

・・今後の目標を聞かせてください。

「‘オヤジ’シリーズ」は追求し続けていきたいですね。また、せっかくトライデントで様々なデザイン表現に触れることができたわけですから、それを生かして、サンドアートや、発砲スチロールで「小さな‘オヤジ’」を作るなど、イラストレーションの枠にとらわれず、多彩な活動を模索していきたいと考えています。

・・最後に、トライデントの後輩たちに向けてメッセージをお願いします。

トライデントには、先生も学生も個性的な人が集まっています。私は、そうした人々との交流を通して、ものの見方、表現の仕方は一律ではないし、これが正しいというものもない、自分なりに自由に感性を広げていくことが大切だということに気づくことができました。また、専門分野以外の科目も積極的に受講することで、視野が広がったことも有意義でした。それによって、それまでの私は、アートは自己表現の世界と考えていたのですが、単なる自分なりの表現を追求するだけでなく、見る人が楽しくなるような作品を作ることが大切だという発想の転換も芽生えました。その意識が、ライブペインティングへの挑戦にもつながっています。後輩の皆さんにも、ぜひ、刺激的な環境のもとで、多様な経験を積んでほしいと願っています。

Profile

岡田 みゆき (Miyuki Okada)

岡田 みゆき(Miyuki Okada)

1985年京都府生まれ。高校卒業後、トライデントデザイン専門学校に進学。卒業制作展ポスターで&apos;オヤジ&apos;を題材にした作品を制作。現在の&apos;オヤジ&apos;シリーズの礎となる。フリーのイラストレーターとして活躍中。活動内容として「名古屋まつり」のポスター、名古屋まつりでの2日間にわたる「本丸御殿ライブペインティング」、また、名古屋市の「開府400年記念祭」では葛飾北斎が120畳の紙にだるまを描いたという伝説にちなみ、120畳の和紙に3日間かけてのライブペインティングに挑戦し、成功を修める。

同じコースのOB・OG

同じ業界のOB・OG