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「私と河合塾」-OB・OGが語る河合塾-: Vol.49 (2012年7月公開)

  • 弁護士・公認会計士・税理士
  • 海外帰国生コース
弁護士 福田 梨紗さん

河合塾時代の教材や、自筆の小論文は<br />今でも読み返すことがあり、<br />当時の夢を再確認することで、<br />前向きに頑張ろうという勇気がわいてきます。

  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所
    弁護士

    福田 梨紗さん

    出身コース
    海外帰国生コース

弁護士が身近な存在のアメリカの状況に刺激を受けて、弁護士志望に

──海外で過ごされたのは、いつ頃のことですか。

商社マンの父の仕事の関係で、4歳から9歳までニューヨークで過ごしました。その後、いったん帰国して、小学校高学年から中学2年生までは日本の学校に通ったのですが、再び渡米。中学3年生から高校を卒業するまでの4年間は、コネチカット州の学校で学びました。

──そのままアメリカの大学に進学するという選択肢もあったと思いますが、日本の大学を志望した理由は何だったのでしょうか。

私はかなり早い時期から、日本で弁護士になりたいという夢を持っており、それを実現するためには、日本の大学に進学した方がいいと考えたからです。高校を卒業する頃、ちょうど父が海外赴任を終えて帰国することになったという現実的な事情もありました。

──弁護士をめざそうと考えたきっかけは何だったのですか。

テレビドラマの主人公の弁護士にあこがれたのがきっかけですから、最初はミーハーな感覚でしたね(笑)。

また、アメリカの高校では、バラエティーに富んだ授業が開講されており、その中で「法律」の授業に刺激を受けたことも大きかったと思います。この授業では、双方の言い分が食い違い、混沌としているように見える状況であっても、それに法律の光をあてることによって、論理的に解決策を導き出すことができることを教わりました。その思考のプロセス自体に魅力を感じたのです。

それから、アメリカでは、高校の友人ですらも、ちょっとしたトラブルが生じたとき、「この問題はマイロイヤーに相談するから」と平然と言うことがあり、驚きました。高校生に「マイロイヤー」がいるなんて、日本では考えられません(笑)。それだけ弁護士が身近な存在になっているわけです。そこで、日本に帰って、私自身が気軽に相談してもらえるような弁護士になろうという夢を抱くようになったのです。

自分なりの考えが整理・消化できた小論文や面接の指導

──河合塾の「海外帰国生コース」を選んだ理由を教えてください。

アメリカでは、比較的日本人が多い高校に通っていました。先に帰国した先輩たちに相談したところ、ほとんどが河合塾の海外帰国生コースで受験勉強をしていたということを知りました。河合塾は帰国生入試対策に長年の伝統があり、これまでの出題傾向に精通しているため、充実した指導が受けられるとアドバイスされ、私も通うことにしました。

6月に高校を卒業して、7月から河合塾に通い、まず9月の私立大の帰国生入試に臨み、慶應義塾大学、早稲田大学などに合格しました。できれば国立大に行きたいという思いがあり、その後も受験勉強を続け、翌年2月の帰国生入試で東京大学文科一類に合格することができました。

──河合塾の授業はいかがでしたか。

多くの大学の帰国生入試で課される、日本語の小論文、英語(エッセイを含む)、現代文、面接の授業を受けました。当然のことながら、帰国生入試に特化した内容です。経験豊富な講師ばかりで、志望校の過去の出題傾向を踏まえた指導を受けることができました。

──印象に残っている授業はありますか。

小論文の授業ですね。帰国子女ですから、海外で見聞したことを反映させた文章にまとめることが重要なポイントになります。けれども、最初の頃は、頭の中ではたくさんの思いがあるのに、それをうまく日本語の文章として表現することができず悩みました。小論文の授業で、「具体的なエピソードを紹介すること」「海外で過ごす中で、どのようにして日本人としてのアイデンティティーをつくり上げていったのかに着目すること」といったアドバイスをいただき、自分の考えが整理・消化できるようになっていきました。

それから、面接指導もとても役立ちました。個別の模擬面接を受けた後、先生が「模擬面接記録表」に、話すときの態度で注意すべき点、もっと掘り下げて自分の意見を話した方がいいことなど、きめ細かく記入してくださいました。入試当日も持参して、面接の直前まで見直すことで、緊張感をほぐすことができました。

──模擬面接ではどのような点を注意されたのですか。

私の受け答えは、機械のような棒読みで、事前に用意した解答の原稿を覚え込んでいるのが見え見えだと指摘されました(笑)。的を射た指導だと納得して、自然な対応になるように練習を重ねました。

──帰国子女ですから、英語の授業はそれほど必要なかったのではないですか。

そんなことはありません。帰国子女は「話す」「聞く」ことは大丈夫なのですが、けっこう文法がおろそかになってしまっているのです(笑)。そのため、長文読解問題を感覚で解いてしまうところがあり、ある程度までは得点できるのですが、難関大学に合格するために、より高得点をめざすとなると、限界が生じます。厳密な読解力が要求されるわけで、河合塾で文法をしっかり整理し直したことが、合格に結びついたと思っています。

──そのほか、河合塾時代の思い出を紹介してください。

私立大の帰国生入試に合格した後、気持ちを緩めずに、国立大をめざして勉強を続けるのは、なかなか大変でした。何とか集中力を持続させることができたのは、「不動心」を座右の銘にして、最初の目標を貫こうと心がけたこともありますが、それ以上に、講師や周りの仲間など、支えてくれた人々の存在が大きかったと感じています。スタッフの方々は常に気さくに励ましの声をかけてくださいました。現役大学生のスタッフも多く、私は東大生のスタッフの方に、よく勉強方法などについて相談していました。ご自身の経験を踏まえたアドバイスだけに、大いに参考になりましたね。フェロー(学習指導員)による個別相談の機会も活用し、役立てることができました。また、海外帰国生コースの友人たちは、個性的なタイプが多く、廊下を歩くときは「静かに」と注意されるぐらい(笑)、にぎやかでした。海外生活が長い私にとっては、暗い顔で黙々と受験勉強に邁進するような雰囲気だったら、窮屈に感じてしまっていたかもしれません。そんな友人たちと休み時間に英語で会話を楽しんだり、明るく自由な環境のもとで、リラックスして勉強を進められたことが良かったと思っています。

ロースクールの1期生として、国際的な取引を扱う業務にやりがいを感じ

──東大入学後は、最初から司法試験に向けた勉強をしていたのですか。

いえ、入学直後に応援部に入り、チアリーディングの練習に熱中しました。六大学野球やアメリカンフットボールの試合などで応援したことが、いい思い出になっています。大学3年生になって、「そうだ、私は弁護士になることが目標だった」と思い出し(笑)、司法試験予備校にも通うことにしました。ちょうど私が卒業する年から、法科大学院(ロースクール)がスタートすることになり、慶應義塾大学の法科大学院に第1期生として入学しました。

──慶應義塾大学の法科大学院に進学したのは、どのような理由からですか。

当初は、人々にとって身近な弁護士をめざしたいと考えていたのですが、大学で学ぶうちに、英語力を生かして、国際的な企業間のクロスボーダーの取引を扱う弁護士になりたいという思いが強くなっていきました。そこで、渉外法のカリキュラムが充実している慶應義塾大学の法科大学院に進むことにしたのです。幸い、第1回の新司法試験に合格。1年間の司法修習を経て、アンダーソン・毛利・友常法律事務所に入りました。就職の際は、外資系の法律事務所も視野に入れていたのですが、将来、海外でも活躍できる弁護士になるためにも、まずは日本の法律についてしっかり研鑽を積むことが重要だと考えて、現在の事務所への就職を選択しました。

──現在は主にどのような業務に携わっていらっしゃるのですか。

海外のクライアントも多い事務所なので、上層部にお願いして、できるだけ海外企業に関連する案件を担当させてもらっています。たとえば、海外企業が日本でビジネスを展開する場合、法律上のさまざまな規制があります。法律に則って、スムーズに業務が推進できるようにアドバイスするのが主な役割であり、とてもやりがいを感じています。

また、今年夏から1年間、アメリカのロースクールへの留学も予定しており、アメリカの弁護士資格も取得して、活躍の場を広げたいと思っています。

河合塾の学びは単なる受験のためだけでなく、その後の思考のベースにもなっている

──これまでのご経歴の中で、河合塾で学んだことが役立っていると感じられることはありますか。

帰国したとき、せっかくの貴重な海外経験をその後の人生に生かしたいという思いが強くありました。けれども、そういう漠然とした気持ちはあっても、具体的な道筋は暗中模索の状態でした。それを明確にしてくれたのが、河合塾の授業だったと感じています。小論文や面接などの指導を通して、「自分の長所・短所は何か」「将来、どんな仕事をしたいのか」「その仕事に海外経験はどのように生かすことができるのか」「海外で得た感覚、視点をそのまま持ち込むのではなく、日本の実情にあったものにするには、どんな意識が必要になるのか」などを、文章にしたり、言葉で話したりすることによって、将来の方向性が明確になっていったのです。

私は、今でも河合塾で学んだ当時の教材や、自分で書いた小論文などを大切に保管しており、時々読み返しています。そうすると、多忙な日々の業務に追われて、つい忘れがちになっている、あの頃の熱い思い、夢を再確認することができ、前向きに頑張ろうという勇気がわいてきます。私にとって、とても大切な宝物になっています。

──最後に、海外帰国生コースの後輩に向けて、アドバイスをお願いします。

帰国子女の場合、海外の高校を卒業して、日本の大学の入試を受験するまでに時間が限られているのが実情です。ですから、まずは効率よく勉強を進めることが肝心です。河合塾は長年の蓄積によって、志望校に特化した指導を受けることができますから、信じて頑張ってほしいと思います。

しかも、河合塾で学んだことは、単に受験にだけ役立つのではなく、その後の考え方のベースになることも強調しておきたいですね。さまざまなテーマで小論文や英語のエッセイを書き、面接で話す内容を整理することが、視野を広げ、自分なりの世界観を構築することにつながるということを意識して、日々の勉強に取り組むことが大切だと思います。

Profile

福田 梨紗(Risa Fukuda)

福田 梨紗(Risa Fukuda)

1980年東京都生まれ。4歳~9歳までニューヨーク、中3~高3までコネチカット州で過ごす。1999年グリニッジ・ハイスクールを卒業後、同年7月河合塾海外帰国生コースに入塾。2000年東京大学文科一類に入学。2004年同大学法学部卒業後、慶應義塾大学法科大学院に進学。2006年同大学院修了。同年新司法試験に合格する。1年間の司法修習を経て2008年から弁護士としてアンダーソン・毛利・友常法律事務所に勤務。

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