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「私と河合塾」-OB・OGが語る河合塾-: Vol.75 (2014年6月公開)

  • 弁護士・公認会計士・税理士
  • 専門学校トライデント
弁護士 裵 貞嬉(ベ・ジョンヒ)さん

国籍に関係なく、誰もが仲良くできる<br />社会の構築に貢献する<br />弁護士をめざしたい。

  • 愛知市民法律相談所
    弁護士

    裵 貞嬉(ベ・ジョンヒ)さん

    出身コース
    トライデント外国語・ホテル・ブライダル専門学校

人々のやさしい接し方などに魅力を感じて、日本への留学を決めた

・・日本に留学したいと思うようになったきっかけから教えてください。

叔母が名古屋に住んでいたため、小学生の頃から、夏休み、冬休みなどによく叔母の家に滞在させてもらっていました。道がきれいなこと、スーパーの陳列棚がきちんと整理整頓されていること、人々のやさしい接し方などに魅力を感じて、ぜひ日本に留学したいと思うようになりました。

そこで、韓国の高校を卒業後、来日してトライデントの日本語学科に入学しました。当初はまだ大学進学までは視野に入っていなかったので、とりあえず1年コースに入学しましたが、その後、日本語を勉強していく中で、日本の大学に進みたいと考えるようになり、延長して2年コースに転籍し、引き続き日本語を勉強しながら、大学入試用の対策指導を受けました。

・・トライデントを選んだ理由は何ですか。

叔父(叔母の弟)がトライデントの出身で、「とてもいい学校だよ」と勧められたからです。見学に訪れたとき、先生方の説明がとても丁寧だったことや、施設・設備が充実していたことも入学を決めた理由です。

充実したカリキュラムで、日本語能力試験に2年連続1級合格

・・入学してどのような印象を持ちましたか。

期待通り、先生方は、誠実に対応してくださる方ばかりでした。また、トライデントには韓国のほか、中国、ベトナム、フィリピン、香港、アメリカ、イギリスなど、さまざまな国の外国人留学生が学んでいます。日本人学生や、そうした外国人留学生と交流する中で、多様な価値観に触れたことは貴重な経験になりました。

・・印象に残っている授業はありますか。

裵 貞嬉(ベ ジョンヒ)さん

トライデントで学ぶ外国人留学生は、まずは日本語能力試験をめざして勉強を進めていきます。そのニーズに応えて、聴解、読解、文章表現など、とても充実した内容のカリキュラムが用意されていました。よく覚えているのが日本語で例文を作る授業です。優れた例文が書けたときは、先生が皆の前で読み上げてくれるのですが、ある学生がクラスの友人のエピソードを交えて書いた例文が紹介されたことがあります。具体的で身近な話題のため分かりやすく、情景がすっと頭の中に入ってきました。それからは私も、仲のいい友人のことを思い浮かべながら例文を作るようにしました。先生に読み上げてもらうために、できるだけ面白いエピソードを選ぶように工夫しました(笑)。外国語の学習で難しいのは、微妙なニュアンスを理解することです。型にはまった文章を覚え込むのではなく、自分で具体的なエピソードを交えながら例文を書いたこと、および友人の書いた例文を聞いて「なるほど、この表現はあのシチュエーションに使うんだな」と納得したことで、日本語特有のニュアンスも分かるようになっていきました。

日本語の小テストも毎週行われ、学生同士で得点を競い合っていました。トライデントでは日本語の能力別にクラスを編成しており、私は入学した時点ではほぼ真ん中のレベルのクラスでした。けれども、その後、頑張った結果、順調に成績が伸びて、後半はずっとAクラスをキープしました。日本語能力試験でも2年連続で1級に合格することができました。

母国語で相談できる韓国人カウンセラーの存在が支えに

・・成績を伸ばす上で、トライデントのどのような指導が役立ちましたか。

分からないことがあったら、放課後に先生に質問に行っていました。どの先生も私が理解できるまで対応してくださいました。また、先生方は勉強だけ教えていればいいといった感覚ではなく、留学生ならではの生活上の悩みや進学相談などにも、親身に応じてくださり、感謝しています。

・・留学生ならではの生活上の悩みとは、どのようなものですか。

たとえば、夜間に、アパートの隣に住んでいる人がうるさくしていた場合、韓国人なら直接文句を言いに行くと思います。けれども、日本では、それでは角が立つので、不動産会社に連絡するなど直接言わないのが一般的なのだと聞いてびっくりしました(笑)。

トライデントには、韓国人のカウンセラーがいて、そうした生活習慣の違いに戸惑ったときなどに、韓国語で相談できる体制が整えられており、とても助かりました。これは経験者でなければなかなか分からないことでしょうが、何に困っているのか、細かいところまで相手にうまく伝わらないのは辛いことです。母国語で相談できるカウンセラーの存在は大きな支えになりました。

・・そのほか、トライデント時代の思い出を聞かせてください。

書き初め、盆踊り、お茶会など、日本文化に触れる行事が豊富でした。盆踊りのときに学生全員で浴衣を着て踊ったこともいい思い出です。日本語能力試験が終了した後は、選択科目も開講され、私は空手を受講しました。以前からテコンドーをやっていたため、どのような違いがあるか、興味を持っていたからです。

小論文の添削指導や模擬面接など、きめ細かな指導に感謝

・・名古屋大学法学部をめざそうと考えた理由は何ですか。

私はもともと、間違っていることを曖昧にせずに、はっきりと指摘する性格です。法律の勉強がその性格に合っていると思いました。また、ほとんどの日本人は温かく接してくれましたが、あるとき、外国人を侮辱する言葉を投げかけられたことがあり、ショックを受けたことも理由の1つです。こんなに進んだ国なのに、まだ外国人への差別意識が残っていることに衝撃を受けて、国籍に関係なく、誰もが仲良くできる社会の構築に貢献できるような仕事がしたいと考えるようになったのです。

・・大学入試に向けてはどのような勉強を進められましたか。

外国人留学生が日本の大学への入学を希望する場合、出願及び入学選考のために大学から「日本留学試験」の点数を求められることが多くあります。名古屋大学の場合、まずはこの「日本留学試験」で高得点を取らないと、出願資格が得られません。「日本留学試験」の科目は、『日本語』の他、『数学』『総合科目(社会科)』『物理』『化学』などがあります。トライデントには、日本語の授業の後に、数学や総合科目などの授業があり、河合塾でも教えている先生の指導も受けることができ、充実した内容でした。

また、名古屋大学法学部入試の場合、出願資格が得られた後、次に受ける「留学生入試(選抜試験)」では、小論文、面接が課されます。担任の先生が小論文の添削指導をしてくださったほか、模擬面接も行われ、ノックや挨拶の仕方、座っているときの手を置く場所、主に質問される内容とその答え方など、きめ細かく指導していただきました。

駐名古屋大韓民国総領事館の諮問弁護士としても活動。日韓の「架け橋」の役割を果たしたい

・・名古屋大学法学部に入学後、力を入れたことはありますか。

裵 貞嬉(ベ ジョンヒ)さん

大学2年生までは、多様な活動に参加して、キャンパスライフを楽しみました。たとえば「SOLV」という留学生交流サークルに所属。まだ日本に十分に馴染んでいない留学生を支援する活動に取り組みました。学園祭実行委員会にも入り、パレードなどの企画・運営に携わりました。

大学3年生になって、将来の仕事を真剣に考えるようになったとき、司法制度が改革され、法科大学院(ロースクール)が誕生したことを知りました。せっかく法律を勉強してきたのですから、それを生かして法曹の道に進みたいという思いが生まれました。その後は、同じようにロースクールをめざす学生たちと勉強会を作り、小論文や適性試験の過去問などの演習に没頭。大学卒業後、愛知大学法科大学院に合格することができました。

・・ロースクール入学後、新司法試験に向けての勉強はやはりハードでしたか。

入学するときは補欠合格だったのですが、最終的には首席で卒業しました。頑張って勉強するうちに、どんどん成績がアップしていく手応えが感じられたため、むしろ楽しかったという印象の方が強いですね。

もちろん、苦労もありました。日本語の法律用語は難解で、なかなか論理的に読みとることができず、落ち込んだこともあります。そんなときは「法律用語はきっと日本人にとっても難解な用語ばかりだから、難しいのは同じ」と(笑)、自分を励ますようにしていました。そう考えることで、気持ちが楽になりました。

・・ロースクール修了後の経歴を紹介してください。

ロースクールを修了した年に新司法試験に合格し、1年間の司法修習を経て、愛知市民法律事務所で弁護士として活動しています。誰でも気軽に法律相談に訪れることができる事務所をめざしており、私は主に民事一般を取り扱っています。

さらに、今年から、駐名古屋大韓民国総領事館の諮問弁護士に委嘱されました。中部地区在住の韓国人が困っていることをサポートする業務にも力を入れていきたいです。日韓の「架け橋」の役割を果たすことは、私に課せられた使命でもあると考えています。その活動の一環として、今年7月に沖縄で開催される「日韓バーリーダーズ会議」にも参加する予定です。この会議は、日本弁護士連合会と、韓国の大韓弁護士協会が、相互交流を目的として共催しているもので、日韓の弁護士と友好を深め、意見交換したいと考えています。

学校生活そのものを楽しむように心がけてほしい

・・現在の活動において、トライデントで学んだことが生きていると感じていらっしゃることはありますか。

日本で仕事をする上で、日本語の修得は絶対条件になります。とくに弁護士は言葉で説得する仕事ですから、他の仕事以上に重要です。トライデントで日本語の土台をしっかり構築できたことに感謝しています。実は、名古屋大学に入学後、インターンシップを体験する際、事前にマナー講座を受講しました。そのとき、尊敬語、謙譲語の確認で、周りは日本人学生ばかりだったにも関わらず(笑)、全問正解だったのは私だけでした。これもトライデントで学んだ成果だと、誇らしい気持ちになりました。

・・最後に、後輩へのメッセージをお願いします。

外国人留学生にとって、日本語はそんなに簡単に身につくものではありません。ずっと勉強を続けることが大切であり、私自身、今でも継続して勉強しています。なかなか日本語が上達しないことに落ち込むこともあるでしょうが、そんなときは、勉強だけに目を向けるのではなく、学校生活そのものを楽しむように心がけてほしいと思います。トライデントには楽しいイベントがたくさん用意されていますから、積極的に参加してほしいですね。日本のカルチャーを学ぶよい機会です。文化の違いを体感するなかで、日本語への理解も深めることができます。そして、悩んだときは、一人で抱え込まずに、先生方に相談しましょう。トライデントの先生方は必ず親身になって対応してくださるはずです。

Profile

裵 貞嬉(ベ ジョンヒ)さん

裵 貞嬉(ベ・ジョンヒ)(Jeonghee Bae)

1984年韓国・釜山生まれ。2003年に留学生として来日し、トライデント外国語・ホテル・ブライダル専門学校日本語学科へ入学。2005年同校卒業後、名古屋大学法学部、愛知大学法科大学院を経て、2012年司法試験合格。司法修習を経て、愛知県弁護士会に登録。2013年より愛知市民法律相談所で国内案件のみならず、国際的案件にも取り組む弁護士として活躍中。

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