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「私と河合塾」-OB・OGが語る河合塾-: Vol.94 (2017年3月15日公開)

  • 医師・医療関連
  • 河合塾KALS
藤沢市民病院 産婦人科医師 高田 健太郎さん

医師の世界では回り道も特別なことではない。<br />多様なバックグラウンドの人がそれぞれの経験を生かして活躍しています。

  • 藤沢市民病院
    産婦人科医師

    高田 健太郎さん

    出身コース
    河合塾KALS

企業の営業職から一転、学士編入制度で医師をめざす

・・医師をめざそうと思われたきっかけは何でしょうか。

一橋大学社会学部を卒業後、人材系企業で法人営業の業務を担当していました。社会人3年目に、祖父が認知症になり、週末は看病に行く生活を続け、そのまま看取ることになりました。営業職にはやりがいを感じており、充実していたのですが、祖父の姿を見て、もっと人間のコアな部分、生命に関わる部分に携わる仕事がしたいと思うようになったのです。祖父の闘病生活を通して、多様な医療職の方々に出会いましたが、治療行為が可能で、最終的な判断が下せるのは医師だけです。治療の成否によって、祖父の病状ががらりと変わる様子も目の当たりにし、医療職をめざすのなら、やはり医師になりたいと考えるようになりました。

・・河合塾KALSを選ばれた理由を教えてください。

少しでも早く医療現場に出るために、学士編入制度を活用することにしました。文系学部出身ですから、数学や理科などを勉強し直して、一般入試で受験するよりも、学士編入試験の方が合格の可能性があるだろうと思ったことも理由です。学士編入試験の学科試験は、一般的に、生命科学と英語の2科目で行われます(大学によって異なり、物理、化学などが課される場合もあります)。大学で2年次後期(現在は2年次前期編入を実施している大学も多い)から一緒に授業を受けることになるので、他の学生がそれまでに学んだ内容が試験で出されるわけです。一口に生命科学といっても、細胞分子学、免疫学、生化学、病態生理学など、幅広い分野があります。それらを体系的に勉強することができるカリキュラムが充実しているのは、私が調べた限り、KALSだけでした。医学部の教科書を入手して、独学で取り組む方法もありますが、分厚い教科書を何冊も理解するのは困難ですし、どこが重要なのかも分かりません。やはりプロの指導を受ける方がいいと考えました。一橋大学時代の友人が、私よりも前にKALSに通い、学士編入に成功していたことも心強く感じました。何回もKALSの説明会に行き、スタッフの方々の説明を聞き、最短距離で合格できるに違いないと納得した上で、通うことを決めました。

過去問の豊富な蓄積と、将来の臨床にもつながる授業が役立つ

・・KALSの印象をお聞かせください。

何よりも素晴らしいのが教材です。学士編入試験の過去問集などは市販されていませんから、どんな問題が出題されるのか、KALSに入らなければ、まったく情報がないのが実状です。KALSには、歴代の先輩たちの尽力によって、数多くの大学の過去問が豊富にストックされています。また、先ほど申し上げたように、生命科学の試験範囲は、分厚い教科書数冊分に及ぶのですが、それがコンパクトに分かりやすくまとめられたテキストで勉強を進めることができました。

・・KALSの授業についてはいかがでしたか。

高田 健太郎さん

門外漢だった私にも分かりやすい解説で助かりました。生命科学の授業では、単純に試験範囲の知識を教えるだけでなく、その基礎基本となる高校生物にも触れられるので、理解しやすかったですね。一方で、生命科学講師が現役の医師でしたから、学んだ理論が臨床医学の世界とどう結びついていくのか、将来につながる話も聞くことができ、楽しく授業を受けることができました。

英語はもともと得意な方だったのですが、学士編入試験では、『Nature』などの科学雑誌の英語論文の読解が求められます。文法的にはそれほど難しくないのですが、医療用語に慣れていないと、読みこなすことができません。KALSの授業で、そうした医療用語を、背景知識まで含めて教えてもらえたことが役立ちました。

長丁場の入試を乗り切る上で、気軽に相談できる環境が大切

・・そのほか、KALSに通って良かったと感じていることはありますか。

学士編入試験は、5月から11月くらいまで続く長丁場です。毎週末、どこかの医学部の試験を受け続けるスケジュールになります。その中で、モチベーションを維持し、目標を見失わないようにすることは、なかなか難しい面があります。そんなとき、先生やスタッフ、チューターに気軽に相談できるKALSの環境は、とてもありがたいことでした。また、仲間にも恵まれました。学士編入をめざす生徒は、多様なバックグラウンドがあり、会話をするだけで、自分の知らない世界に触れることができ、気分転換になりました。一緒に試験を受けに行くことも多く、気持ちを楽にしてくれました。受験勉強を続ける上で、仲間との人間関係は大切な要素だと感じています。

・・仕事を続けながら通っていたのですか。

10月からKALSに通ったのですが、それまでの数ヶ月は仕事を続けながら独学で勉強していました。その後、自分なりに合格への見通しが立ち、退職して受験勉強に専念しました。約半年後の7月、鹿児島大学医学部の学士編入試験に合格し、2年次後期(10月)から入学しました。

「おめでとう」といえるところに魅力を感じて産婦人科医に

・・産婦人科を選択された理由は何ですか。

先ほど申し上げたように、医師を志望した最初の動機は、祖父の病気を通して、人間のコアな部分に関わりたいと考えたことでした。そのため、当初は高齢者医療に関心を持っていました。けれども、大学でさまざまな診療科について学ぶ中で、産婦人科は人間のコアな部分、すなわち生命に直結する診療科であるとともに、ほぼ唯一「おめでとう」と言える診療科であるところに魅力を感じるようになったのです。2人の娘の出産に立ち会った経験も影響しています。それから、産科の部分に目が行きがちですが、婦人科の領域では、女性が誕生してから亡くなるまでの間、ずっと関わっていきます。子宮や卵巣の腫瘍では外科手術も駆使し、最近では不妊治療に代表される生殖の分野も研究が盛んです。幅広い診療に携わりたいという思いもあったので、産婦人科医になることを決めました。

・・産婦人科医は、小児科医とともに、不足しているといわれています。

選択に直接的に影響したわけではありませんが、必要性が高いことは確かであり、期待に応えていきたいと考えています。

楽な必勝法はなく、地道な勉強を積み重ねることが重要

・・現在の仕事に、KALSで学んだことが役立っている面はありますか。

医学部時代はもちろんのこと、医師には生涯学び続ける姿勢が求められます。その勉強の中で、KALSの授業がベースになっていると感じます。KALSの授業のレベルは高く、臨床を踏まえた話も多かったので、臨床医になった今、「授業で聞いた話が、こんなところにつながっている」と振り返ることがよくあるのです。とくに、「なぜその病気が起こるのか」「なぜその治療法が効果的なのか」、すべての医療のベースになる病態生理の考え方の基本は、KALSで身についた気がします。今でも、KALSのテキストを読み返すことも少なくありません。

・・どのような勉強法、心構えが合格に結びついたのか、後輩へのアドバイスをお願いします。

皆さん、多様なバックグラウンドがあり、自分なりの勉強法を確立され、成功体験も持っている方々でしょうから、私がアドバイスできることは少ないのですが…。ただ、私が合格することができた大きな要因をあげるとすれば、最初にきちんとした計画を立てたことです。チューターの助言を受けながら、どの時期に、どの分野を仕上げるのか、かなり細かな計画を立てました。大切なのは、その計画をぶれずに貫くことです。勉強を続けていると、さまざまな雑音が入ってきます。「今年はこの分野から出題される可能性が高いから、重点的に勉強しておいた方がいい」といった周りの生徒の声が聞こえてくることがあるのです。それに惑わされず、すべての分野をきちんと消化することが大切だと思います。KALSの先生方がよくいっていたのは「成果をあげるための楽な必勝法はない」ということです。予習・復習をして授業を受け、テキストを繰り返し勉強する、地味な作業を積み重ねるしかありません。とくに生命科学は深く、幅広い学問ですから、コツコツ勉強して、ようやく身につくものです。

そうした地道な勉強を長期間続けるのは辛く、上手に気分転換を図ることも重要です。私は時々、まったく勉強しない日を設けていました。大学時代の友人たちと会って、多様な業界の話を聞くのも、いい気分転換になりました。また、KALSで推薦された医学関係の書籍は全部読んでいました。刺激になりましたし、勉強のモチベーションを高める上でも効果的だったと思います。

・・最後に、後輩へのメッセージをお願いします。

医師の世界にはさまざまなバックグラウンドの人がいます。回り道をしてから医師になるケースもそれほど特別なことではありません。そして、多様な人生経験を持っているからこそ、医師の仕事に生かせる面もある気がします。医師は裾野が広い職業であり、皆さんの経験が生きるはずですから、頑張ってほしいと思います。

Profile

高田 健太郎さん

高田 健太郎(Kentaro Takada)

1983年東京都生まれ。聖光学院高等学校卒業後、一橋大学社会学部に入学。卒業後は、人材系の企業に就職し、法人営業に携わっていた。祖父の病気をきっかけに医師を志し、河合塾KALSに通う。学士編入試験で鹿児島大学医学部に合格。藤沢市民病院で研修医としての勤務を経て、現在は産婦人科医として活躍している。

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