「私と河合塾」-OB・OGが語る河合塾-: Vol.111 (2019年12月16日公開)
- 会社経営・起業家
- 教育・研究者
- 大学受験科
河合塾の新鮮な環境の中で<br />共に頑張れる仲間がいたことが<br />勉強へのモチベーションを<br />維持させてくれました。
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EDAYA(デザイン・アート・教育・国際協力事業)
代表山下 彩香さん
- 出身コース
- 大学受験科
一緒に頑張れる仲間と居心地の良い場所
・・・河合塾に入塾した経緯と、印象深い思い出を教えてください
小学生の頃から「国境なき医師団」に憧れ、医師になりたいと思っていたのですが、高校生の時に、「閉鎖病棟」(帚木蓬生)やビリー・ミリガンを扱った本との出会いから、心の問題に興味が移り、人間の心と脳の関係を勉強したいと思うようになり、東大をめざしました。本番で緊張してしまい、結果、浪人して再挑戦することになりました。敗因は、得意科目である英語の失敗であるとわかっていたので、河合塾で一年頑張ることを決意しました。高校時代に1年間のカナダ留学の経験があるものの、小学校から高校までずっと女子校だったため、河合塾の環境は非常に新鮮でした。少人数ということもあり、みんなで一緒に頑張ろうという雰囲気にあふれていました。この仲間がいたからこそ、受験勉強へのモチベーションを維持することができ、非常に居心地の良い場所でした。
フィリピンでのボランティア活動が人生の転機
・・・大学ではどんなことに力を入れて学びましたか
晴れて東京大学に入学した私は、教養学部時代には、興味が向くいろいろな学問を幅広く学び、日本の伝統芸能を鑑賞したり、伝統文化も体験しました。幼い頃の夢だった国際活動への思いは強く残っていたため、農学部の国際開発農学専修に進みました。大学院では、もう少し直接的に人に関わることをしたくなり、医学系研究科の人類生態学研究室の門をたたきました。修士1年の夏、周りが就職活動に取り組み始める中で、本当は何がしたいのかを真剣に模索し始めました。
自分自身の内部を深く見つめた結果、「国際」「文化」「マイノリティ」などのキーワードが浮かび上がってきました。そして「S.T.E.P22」*の奨学生としてフィリピンで活動したことが私の人生の大きな転機になりました。
*「NPO法人S.T.E.P22」海外での自主的活動を通じ、自分の経験、知識などを社会に還元していく、ギフトネクスト的循環型グローバル社会の形成に貢献し続けられる方に対し、資金援助とサポートを行う奨学金です(現在は活動を停止)。
竹の楽器の音色に魅了され、彼らの生活改善ができればと起業
・・・どのような出会いや経験が、人生の転機になったのですか
フィリピン北部のルソン地方で伝統楽器のプロ演奏者であるエドガーさんと出会いました。楽器は竹製で、すべて彼の手作りです。同時に、生活のため過酷な鉱山労働をしていることも知りました。このような状況を何とかできないかと思い、修士論文ではフィリピンの鉱山労働者のサバイバル戦略を取り上げ、その鉱山でフィールドワークを行いました。しかし、現状の把握と原因の分析はできても、彼らの生活を改善することにはつながりません。竹の細工技術でジュエリーを作り、生活向上につながるのではないかと思い、大学院修了するとEDAYA(竹でジュエリー制作・販売するプロジェクト)を立ち上げました。
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EDAYAアートブック「わたし」と「社会」のリデザイン(EDAYAの挑戦と学びの軌跡を綴った書籍。2017年4月刊行。)
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EDAYAアートブックより(2013年実施「EDAYA JOURNEY展」の様子。現地の竹やラタンを使った作品と共に、竹楽器の文化を紹介。)
人の心に訴えかけ、勇気づけるNPOの活動に邁進中
・・・現在の活動について教えてください
私が本当にやりたかったことは、自分が雇用を創出することではなく、彼ら自身が自分たちの伝統文化の素晴らしさに気づき、それを次の世代に継承させていく仕組みをつくることだったと気づいたのです。そこで、人々の気持ちに訴え、前向きにさせるきっかけを提供する活動に徐々にシフトしていくことにしました。現在は、NPO代表として当初の「伝統工芸の魅力あふれる質の高いジュエリーのプロデュースと販売」に加え、「社会起業やイノベーションに関わる教育プログラムの開発と実践」「竹を使う文化を通じた地域活性化プロジェクトの推進」の3本柱を中心に活動しています。最終的には、伝統文化の継承と地域活性化につながる教育やアート活動を企画・実践できる人材育成する学校のような「場」をつくりたいと思っています。そして、そうした活動を通してアジアの人たちがお互いに学びあうことができればと思っています。
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北ルソンの山岳先住民族、カリンガ族の文化に着想を得たアクセサリー。竹楽器のミニチュアなどをシンボルとしている。ソーシャルプロダクツアワード2016受賞。(上記3点のアクセサリー全て)
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例えばこの作品は、平和を願う儀式で使う竹楽器サッガイプとコーヒー収穫に使う農具サングルの形に着想を得ている
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この作品では、魔よけの儀式で使われる倍音の竹楽器バリンビンと子宮の形をした現地の伝統的なお守りファーティリティサインをシンボルとしている
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タンビ(カリンガ族のヒーリングの儀式、お祭りや結婚式など、村人が集まりダンスを楽しむときの伴奏としても用いられる打楽器。伝統的には6本1組)
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クリファオ(カリンガ族の口琴のこと。特徴は、竹製であることに加え、直接手で弁をはじく演奏法にも見いだせる。)
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ウリモン(カリンガ族発祥の世にも珍しい鼻笛。鼻息を穴にそっと吹き入れることで、心地の良い音を奏でる。)
人生の1ページとして河合塾の生活を充実させてほしい
・・・最後に河合塾で学ぶ後輩にメッセージをいただけますか
予備校は受験勉強する場所ですが、浪人時代もまた人生の大切な1ページです。ですから勉強だけにとどまらない経験をしてほしいですね。新しい人との出会いが見出せるかもしれませんし、河合塾で開講されている大学のゼミのような教養講座(エンリッチ講座など)に参加してもいいでしょう。そうした経験が次のステップにつながるきっかけになれば、充実した浪人生活になるのではないでしょうか。受験勉強に力を入れつつも、河合塾での生活を楽しんでもらえたらと思います。
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山下 彩香(Ayaka Yamashita)
1985年福岡県生まれ。横浜雙葉高等学校1年時、ロータリー青少年交換プログラムでカナダに1年間留学。高校卒業後、河合塾横浜校の大学受験科に通う。2006年東京大学理科二類に入学。東京大学農学部国際開発農学専修、同大学院医学系研究科卒業。大学院在学中に「S.T.E.P.22」の奨学生としてフィリピンでボランティアを活動する。 2012年フィリピンにてEDAYA(デザイン・アート・教育・国際協力事業)を起業。NHK・朝日放送・AERA・朝日新聞等で活動が紹介される。内閣府主催シンポジウム等で講演。2019年夏よりフルブライト奨学金プログラムにてハーバード大学デザイン大学院に留学中。
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