「私と河合塾」-OB・OGが語る河合塾-: Vol.136 (2024年03月公開)
- 教育・研究者
- MEPLO
河合塾MEPLOで鍛えられた<br />本質を考え抜く力を武器に<br />高効率太陽電池開発につながる<br />基礎研究に邁進中!
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理化学研究所 開拓研究本部
基礎科学特別研究員今井 みやびさん
- 出身コース
- MEPLO
校舎長の勧めでグリーンコースからMEPLOに変更
・・・河合塾MEPLOとの出会いについて教えてください。
高校入試に合格して気が緩み、成績が落ちてきたことから、高1の冬から地元に少し前にできた河合塾のグリーンコースに通うことにしました。ところがしばらくすると、校舎長さんから「あなたは池袋にある東大専門のMEPLOに通った方がいいよ、学校からも近いから」と勧められるようになりました。結局、グリーンコースには2カ月ほど通っただけで、高2直前の春期講習からはずっとMEPLOのお世話になることにしました。
しかし、MEPLOは原則として中高一貫校の生徒が対象で、高校受験組の私とは進度がまったく合いません。習っていない分野の応用問題をどんどん解いていくような授業も多く、心が折れそうになりました。ただ、講師の先生方は進捗度合いの違いを気にかけてくださり、自習で補いつつ先生方に頻繁に質問に行くようにしながら、何とかついていった感じです。
現在の研究につながる基本的なスタンスを培えた
・・・MEPLOの魅力はどんなところにあるのでしょうか。
反復練習を通して問題を解けるようにする詰め込み型の授業のイメージが強い予備校ですが、MEPLOはまったく違っていました。少数の良質な問題、つまり背景知識まで含めた深い理解が必要な問題が与えられ、自分の頭で何とか考えて解くといった授業が中心です。数学でいえば、解法がすぐに見えるような問題ではなく、さまざまな視点から解ける可能性を検討することが求められるような問題ばかりでした。
けれども、それが結果的に、深く本質を見極めるという姿勢を養ってくれました。研究の世界では、1つの現象にさまざまな解釈があり得るため、どれが本当に真実に近いのか、深く、しかも多角的に考え続けることが求められます。MEPLOの授業を通じて、現在の仕事にも通じる基本的なスタンスを培うことができたと思っています。
物理系に進むか化学系に進むかは非常に迷いましたが、化学系メーカーで働く父にも相談し、ものづくりの観点から貢献できる可能性が高い応用化学専門に進むことにしました。
希望とはまったく違う研究室で、研究テーマが見つかった
・・・大学時代はどのような活動に力を入れたのですか。
大学4年時に初めて学会に参加
東京大学へ入学後、1~2年次は、週5日のバトミントンサークルの活動に加え、MEPLOで生徒指導に関わったり、家庭教師や高校での集団授業を受け持ったりと、教育系のアルバイトも複数経験し、学生生活を謳歌していました。
4年次に研究室に配属されるのですが、クラスで私1人だけがジャンケンで負け、希望していた太陽電池の研究室に行けませんでした。おもしろいのは、希望の研究室に進んだ仲間のほとんどはアカデミアには残らず、希望から外れた私が博士課程に進み、研究職に就いているということ(笑)。人生は本当にわからないものだと思います。
結局、所属したのは走査型トンネル顕微鏡を駆使するナノサイエンス系の研究室でした。応用化学専攻ではなじみのない装置でしたが、苦労の末に分子や原子の形がはっきり見えたときは、本当に感動しました。同時に、こんな素晴らしい技術に携わることができるなら、修士課程で太陽電池の研究室に移るよりも、この技術を追求することで、クリーンなエネルギーに貢献できるような研究を展開していこうという前向きな希望が生まれました。
まったく新しい太陽電池のデザインにつながる基礎研究を続けたい
・・・現在の研究テーマについて教えてください。
走査型トンネル顕微鏡の内部(提供:理化学研究所)
研究テーマは学生時代から一貫しており、物質に光が当たったときに流れる電流をできるだけ微細なレベルで観測する研究を続けています。光を当てても電流の発生が確認できなかったある物質に対してこの技術を駆使した結果、1つの分子の中でプラスの電流とマイナスの電流が発生していて物質全体としては電流が相殺されていたことが、2年前に世界で初めて確認できました。この研究はネイチャー誌に発表しています。
光が当たると電流が流れるという現象は太陽電池の基本原理ですから、この研究を続けていけば、将来的には非常に高効率な太陽電池のデザインも提案できるようになるのではと期待しています。
実は、最近もう1つのテーマにも取り組みはじめました。一般的な太陽電池パネルの光から電気エネルギーへの変換効率は、現在のところおよそ20%です。ところが、光合成内の色素分子が光から電気へエネルギー変換する効率はほぼ100%。しかもそのメカニズムは完全にはわかっていません。我々の技術を使えば、これまで見えなかった光合成色素分子の微細な配列構造と変換効率の相関も解明できるのではないかと期待しており、クリーンでエコなエネルギーへの追求をライフワークにしていきたいと思っています。
周りを頼り、諦めずに努力を続けてほしい
・・・後輩に向けてメッセージをいただけますか。
研究装置と今井さん(提供:理化学研究所)
今は目の前の受験に対して一生懸命取り組んでいると思いますが、その努力は受験だけではなく将来の自分に必ず役に立つ、ということです。自分も高校時代に高い目標に対して自信を失いそうになったこともありましたが、困難に立ち向かって学びぬくという経験が、研究や人生において何事にも逃げずにチャンレンジして立ち向かう姿勢を身につけることにつながりました。MEPLOには周りで支えてくれる講師・スタッフ・先輩がいますので、そうしたサポートを得ながら諦めずに走り抜けてほしいと思います。
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今井 みやび(Miyabi Imai)
埼玉県出身。東大現役進学塾MEPLO池袋教室に通い、東京大学理科一類に現役合格。東京大学工学部 応用化学科卒業。東京大学大学院 新領域創成科学研究科 物質系専攻を経て、現在、理化学研究所 開拓研究本部 基礎科学特別研究員として、ナノサイエンスの研究を行っている。ひとつの分子内で生成される光電流の原子分解能計測に世界で初めて成功し、科学技術のあらゆる分野における最高品質の論文が掲載されているネイチャー誌でも紹介されるなど、ミクロな世界で生じる興味深い現象の解明に取り組んでいる。
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