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(新課程入試) 共通テスト サンプル問題『情報』分析報告

2021年07月16日

2021年3月に大学入試センターは、参考資料として『地理総合』『歴史総合』『公共』『情報』のサンプル問題を公表しました。2025年度共通テストから新たな試験科目として検討中のこれらの科目について、 具体的なイメージを共有するために作成・公表しており、実際の問題セットのイメージや試験時間を考慮したものではありません。今後、大学入学者選抜としての適切な出題について、引き続き検討することとされています。ここでは『情報』のサンプル問題の分析結果をお届けします。

1.全体分析

■所要時間の予想
50~60 分

■解答形式
選択肢の中から解答を選択する問題が8割程度を占めているが、答えが数値になる場合においては数字をマークする出題も見受けられる。

■分量・難易度
・難易度: 普通~やや易しい
・分量 : 普通~やや多い ※共通テスト数学②(大問4問で試験時間60分)を参考に、1問あたり15分を想定

■出題の特徴
・全体として無難な構成だが、データ分析の設問は読み取りや分析が中心である。学習指導要領(1)情報社会の問題解決・(2)コミュニケーションと情報デザインの比重が少ない。第2問は「情報関係基礎」の問題に近く、擬似コードを使用している。

・情報科学に関するキーワードやプログラム・統計量に関する基本的な知識があれば解ける問題のみで構成されていた。言い換えると、情報科学と関連の深い数学や物理の知識のある学生の優位性を軽減するためか、情報科学以外の知識がなくても十分に解答が可能なように、注意深く問題が作成されているように思われる。

・知識を問う問題は少なめに抑えられている一方、文章を読んで判断する問題が多いため、複雑な問題文や選択肢の文章を正しく理解して、必要な情報を素早く抜き出す力、そして思考力が求められる。
第3問は現在数学で出題されるデータ分析と内容が似通っているが、回帰分析を扱った点が数学との差別化になっている。

■その他トピックス
・丁寧な誘導と豊富なヒントと引き換えに、解答する問題数に対して問題文および図表の数がとても多い。情報科学に慣れている生徒であれば、効率的に流し読みすることで比較的短時間の解答が見込まれるが、慣れていない生徒だとすべての図表に目を通すことにとらわれて、大幅に時間がかかり得るだろう。

・「数学I」の統計分野の知識を要する設問がある。ただ、あまり統計に寄りすぎると「数学I」との住み分けが難しくなるため、このサンプル問題以上に統計寄りの問題は出題されないと思われる。

・第2問は「ドント方式」の内容を見聞きしたことがあると、問題文が楽に理解できる。プログラミングの問題は特定の言語ではなく擬似コードで記述されており、学習した言語による有利不利はあまりない。各学校で実情に配慮して言語を選択すればよいと考える。

<参考リンク(大学入試センターWEBページ)>
 サンプル問題、正解表、ねらい等は以下リンクを参照。

2.設問別分析

以下に詳細分析を記載する。
なお設問ごとに「学習指導要領との対応状況」および「キーワード」を下表にまとめているのでご参照いただきたい。

■第1問 小問集合
【問1】
ネットワークの仕組みやクラウドサービスの技術としての特徴と利点、デジタルデバイドの生じる要因を問う問題。基本事項を理解していれば解答できる。〈難易度:やや易〉

【問2】
示したいデータに対して、図解による可視化を行う上で適切な方法を問う設問である。選択肢の図は、PowerPointのSmartArtだが、使用経験がなくても解答できる。〈難易度:やや易〉

【問3】
画像をデジタル化する手順と、デジタル化の利点を問う設問。手順2の右の図の表記方法により、[ケ]を符号化と誤答しやすい。〈難易度:やや易〉

【問4】
IPv4アドレスにおけるサブネットマスクと、イントラネットの扱いと、2進数表現に関する設問。多くの生徒にはあまり馴染みがない内容で、知識がないと取り組みにくいが、なくても本文を丁寧に読むと正解できる。〈難易度:標準〉


■第2問 プログラミング
【総括】
比例代表制の議席配分を題材にしたプログラミングの問題。問題文に日本語で記述されている処理内容を正しく読み取ること、また、問題で与えられたコードが行っている処理手順を理解して、適切に穴埋めをすることが求められる。学習するプログラミング言語が学校によって異なる可能性があることを考慮して、プログラムは擬似コードで記述されている。かといって、プログラミングにおける基本的な考え方を理解していない人がこの擬似コードを解読するのは難しいと思われる。

【問1】
配列を用いる反復処理の基本を問う設問。連想配列やforeachを使わない古典的な処理だが、モダンな言語に慣れていても回答できる。〈難易度:やや易〉

【問2】
提示したアルゴリズムに従って実行する処理をシミュレーションし、途中経過や結果を問う設問である。手順を正しく理解する必要がある。〈難易度:標準〉

【問3】
問2で確認した実行フローを行うプログラムを記述し、アルゴリズムを実装したプログラムの内容を補完する設問である。方法自体は単純だが、生徒にはあまり馴染みがなく、取り組みにくい。〈難易度:標準〉


■第3問 統計、量的データの読み取り
【総括】
散布図やヒストグラム、表などに散らばった各種のデータを読み取る設問。知識として、相関係数や四分位数、分散や標準偏差などの統計量が何を表しているかは最低限知っておかなければ、問題文の読解が難しい。全体として、問題文・選択肢等、読まねばならない文章の量が非常に多く、またその内容も複雑である。試験時間にもよるが、時間内で解答するためには、問題演習が不可欠と思われる。

【問1】
2つのデータの相関を分析し、相関係数の絶対値や正負が示す意味を答える設問。「数学I」の相関に関する知識を要する。図1がやや見づらく、設問文から図を理解する必要がある。〈難易度:標準〉

【問2】
回帰直線の性質に関する知識を用いてデータ分析を行う設問。「得点増加数」と回帰直線の傾きを対応づけて考えられるかがポイントである。回帰分析は、計算量が多いため数学では扱われず、「情報」に特有の設問であると言える。とはいえ、回帰分析の具体的方法を問うているのではなく、回帰分析の結果の解析に重点を置いた設問となっている。〈難易度:標準〉

【問3】
データから求めた各種の統計量(平均、分散、四分位数)で分析を行う設問である。「数学I」の四分位数や分散に関する知識を要する。〈難易度:標準~やや難〉

【問4】
データ中の2つの属性を軸としたクロス集計の結果を分析する設問である。四分位数を用いる分析に慣れていないと、少し戸惑うかもしれない。問4の[ス]は、図表中ではなく本文中に現れた情報が問題を解くのに必要で、図表と選択肢だけ見ておけば解答できるという問題にはなっていない。〈難易度:標準~やや難〉

■各設問の「学習指導要領との対応状況」および「キーワード」

  • 画像1

    〈図1 学習指導要領との対応状況〉

  • 画像2

    〈図2 キーワード〉

3.学習対策

・基本的に、教科書に出てくる単語の意味を理解していれば十分に解答が可能。知らない単語が出てきても、前後の文章や問題から意味を類推すれば解答できる問題が多いので、読解力も磨いておきたい。

・プログラムを作動させるとすぐ結果が出るものでも、与えられた入力から結果が出力されるまでの仕組み・手順を理解することが重要。また、身近な手順をアルゴリズムとして表して自力でプログラミングしたり、データを集めて自分で分析したりする経験も役立つ。統計の知識は数学でも必要なので、漏れなく理解しておくとよい。

・今回のサンプル問題では、細かい知識はさほど要求されず、それよりは教科書の大筋の理解や、問題文の理解に関する問いが中心であった。普段の学習から、丸暗記ではなく内容を理解することに努めたい。プログラミングの問題の一番の対策は、何といっても実際にやってみることである。例えば今回の問題のプログラムを書いて実際に実行してみるなど、プログラミングを体験しておくことを薦める。

■分析内容のご利用にあたって■
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