京都新聞・神戸新聞・産経新聞に河合塾によるコラム連載(第6回)
2021年10月14日
京都新聞、神戸新聞と産経新聞に、京都大・大阪大・神戸大など関西の難関大受験をテーマとしたコラムの連載しています。本連載では、河合塾近畿地区の講師やスタッフが難関大受験に役立つ情報をお届けします。
今回ご紹介する第6回目は、河合塾数学科講師の涌谷先生が大阪大学入試の数学を振り返ります。
大阪大学入試の数学を振り返る ~「難問の数学」易しくなった~
大阪大学の数学の入試問題の歴史は難問の歴史。そう言ってよいくらい従来は受験生を悩ませる難問が出題されてきました。ところが昨年度の入試では、数学の試験が大幅に易しくなり、1年前に書いた拙稿では「次は元に戻るぞ説」を推しておきました。
今年度、ふたを開ければ難易度は元には戻らず私の予想はハズレ。昨年よりはやや難しくなったものの、以前のような難問は姿を見せず、穏やかだけど受験生が躓きやすいポイントを散りばめた「差のつく」試験だったように思います。阪大伝統の空間図形の問題は一般的な参考書にありそうな普通の問題でしたし、理系の入試における微積分の計算量も従来の試験よりは少なめ(考え方は少し難しいものもありましたが)。しかし特に数学IIIの演習量が不足しがちな現役生にとっては、これでも十分手強いものだったはずです。
さあこうなると、また大学側の意図を汲み取ろうとするのが我々予備校講師の習性のようなもの。「やはり一過性のものでは?」「コロナ禍を意識して控えめにしたのでは?」「従来の試験では差がつかなかった反省から入試改革をしようと模索しているのでは?」など様々な予想があります。筆者自身はもしかしたら改革をしようと試みているのではないかと思っていますが、これはあくまで予想です。
受験生の皆さんは、あれこれ予想をしないことの方がむしろ大切だろうと思います。過去の情報に過度に振り回されてはいけません(もちろん完全に無視してもいけませんが)。確固たる数学の力、すなわち与えられた状況を正確に把握し、それを数学の言葉で表現し直し、適切な道具を選択し道筋を構築し、正確かつ素早い計算を実行し、得られた成果を伝わりやすい文章で表現する。その力を身につければ十分なのです。阪大は難問揃いの時代から一貫してその力を受験生に要求してきたのですから。これは易しくなったここ2年間の試験でも決して変化していません。
次の入試は、大学入試センター試験が大学入学共通テストに看板を変えて2年目になります。共通テストでもこのような数学の力をストレートに問う傾向が、センター試験より強まっています。以前は「センター試験対策」という特殊な訓練も必要でしたが、今は「穴埋め形式」や「時間がない」ことを意識した過度な対策は不要です。阪大のような難関大学の個別試験を意識した着実な学びが、共通テストの対策にも直結するでしょう。(河合塾数学科講師 涌谷俊之)
※本寄稿は、新聞掲載が最も遅い産経新聞社の掲載日以降に、同紙から原稿提供を受けて掲載しています。
執筆者のプロフィール

▶河合塾数学科講師 涌谷俊之
大学受験科・高校グリーンコースでは、東大・京大・阪大・医学部といったトップレベルからハイレベルまでの講座を幅広く担当している。また、「阪大入試オープン」の作成メンバーでもあり、阪大をはじめ、難関大学対策教材の執筆を受け持つなど、その活躍の場は多岐に渡る。熱心な指導には定評があり、数多くの生徒から絶大な信頼を得ている。
※ 2021年10月掲載時点