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河合塾フォーカス

河合塾グループの取り組みに焦点をあててご紹介するページです。

現地で行われた教員対象の結果報告セミナーの様子

|17|新興国の学力向上に貢献せよ!河合塾のテストが中央アジアの教育改善に活躍中

全統模試に代表される河合塾グループの学力テストが中央アジアの一国に導入され、現地の教育改善に貢献しています。日本で日常的に使われる学力テストがどのように活用されているのか、その実態に迫ります。

ウズベキスタン教育省 × JICA × 河合塾グループ 3者のタッグで行われた取り組み

2022年4月、東京から6,000km離れた中央アジア ウズベキスタン共和国の首都タシュケントの学校で3,600名の中2~高1生が数学のCBTテスト*に取り組む姿がありました(写真はテスト実施の模様)。このテスト、実は河合塾グループのハピラル・テストソリューションズ(以下、ハピラル)が作成したテストです。
なぜ、日本から遠く離れた異国の地で河合塾グループのテストが実施されているのでしょうか。
*CBTテスト=コンピュータを使用したテスト方式。画面に表示された問題にキーボードやマウスなどで回答する(Computer Based Testing)。

「本事業は国際協力機構(JICA)の中小企業・SDGsビジネス支援事業に提案をして採択されました。2021年8月から『日本型学力検定テストモデル導入に関する普及・実証・ビジネス化事業』という名称で実施しています」と語るのは本事業を担当する、同じ河合塾グループのKEIアドバンス(以下、KEI)の會田恵梨さん。

「ウズベキスタン共和国は、3,350万人の人口のうち42%が24歳以下という若い国。2020年の国立大学受験者が120万人を超えるなど、教育サービスへのニーズが高まりを見せています。同国政府は2030年までにPISAの数学的リテラシーで30位以内をめざすなど、国全体で学力の底上げの動きが高まっています」(會田さん)
その一方で、同国には中等教育を対象とした官・民の学力検定テストが存在しないため、地域や学校間での成績比較や分析ができず、教員の能力向上や学校教育の改善策が立てられないといった課題があるそうです。

そこでKEIとハピラルの両社は、JICAの委託事業としてウズベキスタン国の8年生から10年生(中2~高1)計3,600人に2年間で4回の数学テストを実施。日本型学力検定テストの普及に向けた実証を行っています。テスト実施で得た成績データは分析のうえ、結果資料と教育改善の提言にまとめられて両社から同国政府に報告されます。これまでの取り組みとして、2021年11月と2022年4月にテストを実施。得られた成績を分析し、2022年1月と6月に現地政府への報告を行いました。

日本型学力検定テストの強みとは?

「日本型学力検定テストの強みは、成績資料が豊富なこと」と、會田さんは指摘します。
比較対象として海外発の英語検定テストを見ると、受検後の返却資料はスコアや合否結果のみというケースがほとんど。これに対し、日本型学力テストの典型例である河合塾の全統模試は、得点に加え偏差値や平均点などが記載された個人成績表と、全体概況や学習アドバイスを掲載した統計資料集を返却。受験後の復習に役立てていただいています。加えて高校の先生方向けとして、より詳細な校内成績分析など指導に役立つデータを提供しています。
「全統模試のように、テストの分析・振り返りを通し、学習改善に役立つよう丁寧にサポートするのが日本型学力検定テストの特長。テストの作り方もさることながら、終わった後の分析に価値を見出されているのではと思います」(會田さん)

実際にウズベキスタン政府(教育省)への報告では、学年別の平均点や得点分布などをまとめた成績資料を展開。日本型の成績分析は驚きをもって受け入れられました。「現地では得点分布や偏差値という概念はあまりメジャーではなく、これらを使った報告は新鮮だったようです。また、成績上位層と下位層で差が出た問題を浮き彫りにするG-P分析*の結果から、教科書で扱う内容が多すぎるのでは?、先生がすべて教え切れていないのでは?といった要因まで踏み込み、公教育の改善点として提言も実施。教育省の担当者から数多くの質問をいただくなど大きな反響がありました」と會田さんは手ごたえを語ります。
*G-P分析:各設問の選択肢についてテストの上位・中位・下位群それぞれの選択率に差があるかを検証する分析

現地の教科書を読み込み、徹底的にローカライズした問題作成

問題を作成したハピラルの阿部祐太さんは「正確に学力状況を把握するためには問題構成を現地のカリキュラムに合わせる必要があり、ウズベキスタンの教科書4学年分(7-10年生)をすべて読み込みました」と振り返ります。同じ数学でも単元を学ぶ学年や順序が日本とは違うことを踏まえ(写真下が同国の教科書)、全ページを読み込んだそうですが「数学の専門用語は翻訳ソフトも不得手で、一つ一つ翻訳結果から内容を推理しながら解読しました。よく出る表現は最終的に身体で覚えました(笑)」(阿部さん)と苦労も多かったようです。

作問でとりわけ注力したのは選択肢に入れる誤答の作り込み。「生徒の間違い方を想定し、一つ一つ誤答を作りこみました。4肢選択式の問題でしたので、生徒にとってよくある間違いをできる限り選択肢に入れることで、生徒の実態をより知ることができるのでは、と考えたからです」と語る阿部さん。実際のテストでは想定した誤答を選ぶ生徒も多く、誤答選択肢がうまく機能したことを感じたそうです。「文字を使うなど抽象度があがると苦戦する生徒が増えるなど、日本の生徒との共通点も感じました」(阿部さん)

阿部さんは現地政府の報告とあわせて行われた教員向けのセミナーに参加(写真上)。首都タシュケントをはじめウズベキスタン各地から参加された先生方に(オンライン含む)、問題の解説や翌日から使える授業改善のアイディアなどを披露しました。セミナーは大盛況で予定の時間では終わらず、終了後も会場の外で熱心な先生方の質問攻めにあいました。
「教科や指導法についてだけでなく、日本の先生のお給料や仕事の様子など、本音の部分の会話もできてとても楽しく、次のセミナーで何を話そうか楽しみです」(阿部さん)

距離は遠くても一緒に仕事をしている感覚~海外事業ならではの苦労とやりがい~

河合塾グループではまだ珍しい海外でのプロジェクトについて、會田さんと阿部さんに振り返っていただきました。

[會田恵梨さん:(株)KEIアドバンス 高等教育事業企画開発部(写真左)]
現地スタッフとのコミュニケーションは大変でした。通訳を介してのやり取りでは細かいニュアンスが伝わっているかに気を使い、必要に応じて何度も説明するように心がけました。

一方で、嬉しいと感じたのは現地の人と共感でき、信頼関係を築けたと感じた時です。たとえば同じテストを実施したことで、現地の生徒も日本の生徒も同じところでつまづき、教員も同様の悩みを抱えていることが分かりました。このような共通の課題に向け一緒に対策を考え、それが実りつつあると感じた時はとても嬉しいです。そのほか、時差(現地は日本より4時間遅れ)やITツールの違い、コロナによる渡航制限や現地の政府関係者のアポ取りなど、海外事業ならではの難しさはありましたが、そこはある意味で楽しみながら取り組みました。幸い、社内はじめ関係者の皆さまの協力をいただき感謝だなと思っています。

[阿部祐太さん:(株)ハピラル・テストソリューションズ 研究開発部(写真右)]
作問はプロジェクトの根幹。建物で言えば基礎であり、ぐらつかないよう苦心しました。一方で留学経験もなく日本の数学しか知らない自分が作った問題が、現地で一定の評価を得て、教員セミナーで先生方と共感しあえたのは得難い経験で嬉しかったです。
 
同時に、ここまで来られたのはアドバイザリーをお願いした数学の先生など現地スタッフのおかげです。タイトなスケジュールの中、専門家として的確な意見を出していただいたことで完成まで漕ぎ着けました。日ごろから仕事の上で信頼関係は大切と思っており、それは海外業務でも同じでした。いただいたアドバイスや教科書の翻訳などで素晴らしいことがあれば感謝をしっかり伝える。そこから連帯感が生まれ、東京とタシュケントで遠く離れていても一緒に仕事をしている感覚がありました。

世界中の子どもたちに河合塾グループのテストで貢献したい

最後に今後の展開を會田さんにお聞きしました。

「ウズベキスタンにおけるJICAとのプロジェクトは、あと2回テストを実施し、2023年10月に現地政府に報告書を出して終了します。その後は河合塾グループとしての本格展開を検討しています」
同時に、今回実施した教員セミナーを進化させた教員研修やウズベキスタンから日本への留学支援など、取り組みの過程で見えてきたさまざまな教育ニーズにビジネスとして対応することも考えているとのこと。そして将来の夢として「同様のニーズを持った他の新興国にも河合塾グループのテストを広め、現地の学力向上に貢献していきたいですね」と笑顔で語られました。

河合塾グループが作成した学力テストを世界の各地で子どもたちの学力向上に役立ててもらう、そんな日を夢見て挑戦は続きます。