「私と河合塾」-OB・OGが語る河合塾-: Vol.139 坂根千里さん
大学卒業と同時にスナックを起業!
地域のオアシスとしてスナック文化を広めたい
坂根 千里さん
株式会社水中 代表
スナック水中 ママ
どうしても国立大唯一の社会学部に進学したかった
河合塾で受講することになった経緯を教えてください。
中学1年生のとき東日本大震災が起き、震災からの復興の様子やまちづくりに尽力する人たちの活躍をテレビで見ているうちに、まちづくりに興味を持つようになりました。地域の人の声を聞き、行政や企業などと連携して、町を再生したり、活性化したりする仕事に憧れ、高校の先生や親に相談したところ、都市政策という分野があることを知りました。
そこで国立大唯一の社会学部で都市政策を学ぼうと一橋大学を受験しましたが、現役のときは力不足で浪人することにしました。同じく一橋大をめざして浪人することになった友人から、河合塾の一橋大コースの評判がいいとの情報を得て、他の予備校をリサーチすることもなく、河合塾に入塾しました。
河合塾の1年がなければ今の私はない
河合塾での日々はいかがでしたか。
最高でした。これは心からの言葉です。自分の人生にとって本当に必要な1年間でした。今振り返って総括すれば、3つの点で自分を大きく成長させてくれたと思っています。
第1は、あらゆるノイズをシャットアウトして、ストイックに1つのことに集中すると、自分はこんなにも頑張ることができる、こんなにも力を発揮することができるということに気づけたことです。
第2は、社会との向き合い方に対する多彩な視点を得られたことです。多くの講師の方々は、密度の濃い授業はもちろん、自分自身の生きざまについて熱く語ってくださいました。今でも忘れられないのは、英語の講師による「憂国の情」についてのレクチャーです。国を愛すると同時に、国を憂えて頑張ることの大切さを教えていただき、早く社会のために働きたいという気持ちが掻き立てられました。現在もその気持ちは失っていません。
第3は、同じ目標を持って頑張る仲間の存在が、本当に心強いものであると実感できたことです。それは塾生同士だけでなく、チューターも同様でした。模試の成績が悪かったり、気持ちが沈んだときはもちろん、良いことがあったときも含め、ほぼ毎日のように話をしに行っていました。より良い勉強法を探るために講師に連絡を取っていただいたこともあります。最後まで並走してくださったことに今でも感謝しています。

民泊を運営し、カンボジアでホテル経営も学んだ
大学ではどのような活動に力を入れたのですか。
河合塾での日々があまりにも濃密で、勉強への高い熱量のまま入学したため、周りの大学生の様子に正直いって落胆し、まさに「憂国の情」を覚えたほどでした。そのため、大学への期待が急速にしぼみ、どちらかといえば学外の地域活性化プログラムなどの活動に力を入れるようになっていきました。
あちこち旅をしているうちに、地元の国立(くにたち)市で民泊を始めれば、大学で勉強しながら、旅人からも学べますし、宿泊している人たちと国立市内を観光したり、農業や地域イベントに共に参加することで地域の活性化にも貢献できると考え、民泊運営サークル「たまこまち」を仲間と立ち上げました。そして、大学2年生から6室の空きアパート1棟を借りて改装し、「ここたまや」というゲストハウスの運営を始めました。私自身もそのアパートの1室に引っ越し、予約受付から部屋の清掃、地域を巡るツアーの企画などに卒業まで携わりました。その過程で経営について学びたくなり、大学3年生のときに1年間休学し、民泊の立ち上げ時の支援者でもあった一橋大OBが経営するカンボジアのホテルで、経営補佐のような形で勉強させていただいたこともあります。



そんな経験を重ねるうち、まちづくりへの心境が変化してきました。行政やデベロッパーとして都市計画などのプランを立案することよりも、そのプランに沿って実際に街を活性化させたり、困っている人を助けたりする側に立ちたいという気持ちの方が強くなってきたのです。ちょうどアルバイトしていたスナックのママから店を継いでほしいと打診されたこともあり、大学3年生の冬で就職活動をやめました。もともと独立志向が強く、いずれ起業をと考えていたこともあり、就職しないことへの不安はあまりありませんでした。その後、銀行に事業計画を提示して融資を受け、クラウドファンディングで資金を募ることで開業資金を集め、卒業と同時にスナック「水中」をオープン、ママとしてスナック経営に乗り出しました。
スナック文化を広めていきたい
今後の抱負を教えてください。
スナックは、1人で来て知らない人と友だちになれる場所であり、人と話したり笑ったり歌ったりしてストレスをうまく発散し、明日への活力を得られる場所でもあります。その意味で現代社会のオアシスだと思っています。そんなスナックの良さを広く知ってもらうため、運営組織を法人化しました。今後も店舗数をどんどん増やしていくつもりです。
自分には必要なときに集中して頑張れる力があることや、社会や地域にもっともっと貢献したいという前向きな気持ち、信頼できる仲間と努力する喜びなど、河合塾の1年間で得た3つの学びすべてが、いわば自分の「核」になっており、事業を発展させていく上で大きな原動力になってくれています。
古いイメージが残るため、スナックという場で働く魅力を伝えていくことが課題ですが、スナックを経営する人の独立支援も含め、新たなスナック文化の発信に力を注いでいきたいと考えています。



坂根 千里(Sakane Chisato)
東京都出身。東京都立立川高校卒業後、河合塾立川校の大学受験科に通い、一橋大学社会学部に合格。大学在学中に国立市谷保でゲストハウス「ここたまや」を立ち上げ、地域のNPOや商店街と交流を重ねる中で「すなっく・せつこ」と出会う。スナックという業態に魅了され、卒業と同時に事業を承継。クラウドファンディングで支援を受け「スナック水中」を開業し、現在は同市内で2店舗目のオープンを控えている。株式会社水中の代表として、スナックを中心にした「人と人がつながる居場所づくり」をめざしている。
出身コース
大学受験科
最適化された志望大学別コースで、第一志望に再チャレンジする高卒生を夢の実現へと導きます。