学びの力を育てる河合塾の取り組み
■みらい探究プログラムK-SHIPとは?
みらい探究プログラムK-SHIPは、河合塾が展開するオンラインプログラムです。
なぜ学ぶのか、どう学ぶのか、そもそも学ぶとは何か。皆さんと一緒に考え、学ぶ『わくわく』を作りたい。
そんな思いで、河合塾では「みらい探究プログラム K-SHIP」をはじめました。
「教科の見方・考え方を身につける」「学び方を学ぶ」「興味・関心を深める」「進路・キャリアを考える」「学問の世界をのぞいてみる」「探究的な学びを深める」の6つのテーマで、受講生の学びを深めます。

社会の変化に伴い、入試で問われる力も多様になってきました。みらい探究プログラム K-SHIPでは、そうした多様な入試にも柔軟に対応できる、主体的で本質的な力を育成することを目指しています。
「K-SHIP」の名称
・K:Kawaijuku(河合塾)
・S:Sophia(知)
・H:Hub(中核)
・IP:Inquiry Program(探究プログラム)
それぞれの頭文字で構成されています。
また、「SHIP」には会員の「Membership」的な意味と、「船/出航」のイメージを重ねています。仲間とともにこれからの世界へ出航し、学びを広げていくという思いを込めた名称です。
今回は数あるイベントの中から、2026年3月29日(日)に実施された「みらい探究の日」についてご紹介します。
■K-SHIPイベント「みらい探究の日」開催レポート
「みらい探究の日」は、メタバース(ovice)を活用したオンライン空間で開催されました。 本イベントは、高校1~3年生とその保護者を対象とし、講演やワークショップを通じて「学びのワクワク」や将来への小さな気づきを得ることができます。


参加者はアバターを使って各ルームを自由に移動し、講演やワークショップなど多彩なコンテンツを1日にいくつも体験できます。



河合塾はこれまで「入試対策予備校」というイメージが強くありましたが、「みらい探究の日」はその枠を越えて、変化が加速する時代に必要な思考力や主体性を育成する取り組みの第一歩です。
当記事では主要セッションの内容と参加者の声をお伝えします。
特別講演①「イグ・ノーベル賞受賞者が語る!中高生のためのフロンティア思考」

講演者
宮下 芳明教授
明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科
北陸先端科学技術大学院大学で博士(知識科学)を取得後、2007年に明治大学に着任し、2014年から同学教授。
画像・知識科学の知見を基盤に、味覚メディアの研究やデバイス開発に従事。
電気で塩味を増強する減塩支援器具「エレキソルト」や、味を再現するスプーンなどの共同開発・実証実験を通じて、新たな食体験の創出を目指している。
宮下教授は、講演の中で「あたらしいものを開発するのは決して難しいことではない」と強調されました。
発想術の基本は「アナロジー(類推)」であり、発展している技術や仕組みを自分たちの研究対象へ当てはめられないかと考えることが重要だと語ります。
例えば、通販で食品を購入する際に「試食してから買いたい」というニーズを満たすにはどうするか。電話やFAXのように離れた相手に情報を伝える発想を味覚に応用することで、味を伝えるメディア化のアイデアが生まれます。味覚センサーなど技術は存在しているため、あとは“ディスプレイ化”する発想を加えれば、顧客のニーズを実現できる――と宮下教授は説明します。
発想から実際の作成へ進むには、『構造』を理解する必要があるものの、構造の多くは先行研究ですでに解明されているため、すでに確立されている技術や成果をうまく活用できれば新しいものづくりは必ずしも難しくないとも述べられました。
実際、宮下教授のイグ・ノーベル賞受賞作「エレキソルト」は、電気の力で塩味・うま味を強く感じさせるという構造に基づくもので、構造が分かっていれば減塩している人も塩味を感じられる食体験が可能になります。
こうした学生時代に学んだ知識が後のイノベーションに直結すると語られました。
「一人ひとりが好きなものだけを好きなだけ食べて健康でいられる」といった、現実世界では難しいことも知覚の世界では実現可能であると語りました。そして、「我々の生活はもっと幸せになれる。幸せにはまだ伸びしろがある」との信念のもと、学生とともに日々開発に挑んでいると講演を締めくくられました。

参加者からの声
・大学で学ぶことの意味、世の中を変革する研究者 カッコよかったです。何より、宮下先生の研究が楽しそうなお姿が、印象的でした。
・高校までの学びと大学での学びという点や研究によるわくわく(高揚感)が内容を通じて感じられ、学生のモチベーション向上につながりました。
特別講演②「人生に無駄なことは一つもない 伝説の編集者が語る!『好き』から広がる将来の可能性」

講演者
新井 久幸部長
株式会社新潮社出版部 元小説新潮編集長
1969年生まれ。千葉県立東葛飾高等学校、京都大学法学部卒。1993年に新潮社に入社し、「小説新潮」編集長などを経て現職。
担当作に恩田陸『夜のピクニック』、伊坂幸太郎『重力ピエロ』、米澤穂信『ボトルネック』などがあり、編集者としての実務を通じて作家と作品の成長に寄与してきた。
著書に新潮新書『書きたい人のためのミステリ入門』がある。
新井氏は、自らの読書体験や編集者としての実践を通じて、「好き」を軸にした努力の蓄積が将来の自分の役に立つことを、豊富なエピソードに沿って語りました。大学選択にあたり、京都大学は大義名分があって選んだわけではないが、入学後に所属した読書サークルで先輩からの助言を得たことや、メンバーとのディスカッションが現在の仕事にも生きていると述べます。読書好きが高じて入社した新潮社では、大ファンの歌手と関わる機会に恵まれ、担当した小説の帯を書いて大ヒットに寄与した経験も紹介しました。
新井氏は、こうした「ラッキー」に見える出来事も、一生懸命取り組んだ積み重ねの上にあると強調します。
目の前にチャンスが現れた時にすぐ気づき、つかみ取るために日々を全力で過ごしている――それが自身の信条であると語られました。
若い世代には、その時の出来事やそこに伴う感情を書き留めておくことで、振り返った際に努力の積み重ねや自分の変化に気づくことができるため、日記などで記録を残すことを推奨されました。加えて、自分に言い訳をしない姿勢や挫折後に「これからどうするか」を考えて行動することの重要性を説き、「屈」を経て「伸」になる覚悟を持ち続けるようメッセージを送りました。

参加者の声
・まだ進路が決まっていないので教えて頂いたように色んなことに興味を持って見識を深めて行きたいと思います。
・何事も一生懸命取り組んでいれば夢のようなことも起きるんだと思いました。貴重なお話を聞かせて頂きありがとうございました
特別講義①「君ならどう裁く? 昔話で学ぶリーガルマインド~さるかに合戦編~」
講演者:河合塾グループ 株式会社KIES 宮下奈緒氏

講演者の宮下奈緒氏は、大学・大学院で法学を学んだ経歴を持ち、法律や裁判制度に関するご自身の知見を踏まえたワークショップを行いました。
90分の講座には高校1〜3年生から計8名が参加し、3テーブルに分かれてグループワークを行いました。昔話「さるかに合戦」を題材に裁判を行った場合、カニの親子を殺めたサルに対して極刑の判決を下すべきか、検察側・弁護側の主張を討論する形式で進行しました。

あるテーブルでは賛成派と反対派が2対2に分かれ、賛成派は「硬い青柿を投げつけるなど明白な殺意があった」「親ガニだけでなく子ガニまで殺害した残虐性」を根拠に極刑を主張しました。
一方、反対派は「DV家庭で育ったサルの生い立ちに情状酌量の余地がある」「真摯な反省に基づく更生の可能性」を理由に死刑回避を訴え、当初の予定時間を超えて白熱した議論が交わされました。
ワーク終了後は各テーブルの結論をファシリテーターが発表し、結果は3テーブル中2テーブルが極刑に賛成、1テーブルが反対というものでした。
宮下氏はまとめとして、日本では比較的処罰感情が強く、この題材では極刑への賛成が多くなる現状を紹介するとともに、2009年に導入された裁判員制度について説明し、リーガルマインドをもつことの重要性を参加者に伝えました。
参加者からの声
・実際に自分達の知っている昔話を元に考える内容だったので、とても聞きやすかったことに加え、様々な事実を元に実際に考えて自分の意見を他人と共有でき、とても貴重な経験となったので良かった。また、自分にとっては意外な面白い話などが聞けたのも良かった。
・グループディスカッションがあると思っていなくてびっくりしたけど、顔が見えないこともあって活発に話し合うことができたと思います。ファシリテーターさんの話の回し方がうまくてより話し合いを深められた気がします。また、その後の裁判員制度や死刑制度についての紹介が自分の知らないことが多くて新しい発見になりました。貴重な体験をありがとうございました。
K-SHIP担当者からのメッセージ
『みらい探究の日』は、高校生が興味・関心を広げ、自らの進路やキャリアを考えるきっかけをつくることを目的に、メタバース(ovice)上での講演やワークショップに気軽に参加して多様な視点に触れられる場を提供しました。
将来への気づきを促す講演に加え、参加者自身が問いを立て、他者と意見を擦り合わせながら考えを深めるワークショップを行い、変化が加速する時代に求められる思考力や協働力を育てることを目指しました。
今後も、進路・キャリアに関するイベントや教科の本質を深掘りする講座を継続して実施し、より多くの生徒に届けていきたいと考えています。
教育に関心があり、現場で新しい学びづくりに関わりたいスタッフも随時募集しています。
今まで実施してきた取り組みの詳細は下のリンクからご覧ください。

関連リンク
みらい探究プログラム K-SHIP https://www.kawai-juku.ac.jp/event/spc/k-ship/
運営する企業・学校
学校法人 河合塾
小学生~高卒生を対象とした教育事業や高等学校などを対象とした教育活動支援事業、新たな教育価値をを創造するための教育の研究・開発活動を展開しています。