2027年4月開校 ドルトンX学園高等学校 開校記念セミナー

『英語だけでは、戦えない』 次世代グローバル教育の本質とは?国際教育評論家×ドルトン東京学園校長×ドルトンX学園校長対談

未来を拓く挑戦・共創 教育の調査・研究 高校生 中学生 キャリア・進路選択 非認知能力育成 探究型学習 広域通信制高校

ドルトンX学園高等学校は、河合塾グループの学校法人河合塾学園が、2027年4月に岩手県一関市で開校を予定する広域通信制高校です。通信制×全寮制×国内外での探究学習を組み合わせ、「探究」と「挑戦」の経験密度を高めた教育プログラムを展開します。
開校に先立ち、2026年6月20日に「ミライを変えるXセミナー」を開催。「これからのグローバル社会で求められる力」をテーマに、次世代グローバル教育の本質について議論しました。

対談には国際教育評論家の村田 学氏、ドルトン東京学園中等部・高等部の安居 長敏校長、ドルトンX学園高等学校*の古屋 輝周校長(内定)が登壇されました。

*岩手県に認可申請中

村田 学氏(むらた まなぶ)

国際教育評論家/インターナショナルスクールタイムズ編集長

2012年より、インターナショナルスクール・プリスクール専門メディア「International School Times(インターナショナルスクールタイムズ)」編集長。国内外の学校・教育市場を取材するほか、現在は、海外インターナショナルスクールの日本進出支援や私学の国際コース開設支援、学校経営・教育事業コンサルタントとして活躍。また、国際教育シンクタンクInternational Education Lab(IEL)所長として、国際教育を軸とした新たな教育モデルや地域連携の研究・発信にも取り組んでいる。

安居 長敏氏(やすい ながとし)

ドルトン東京学園 中等部・高等部 校長

滋賀県出身。滋賀県の女子高校に20年勤務した後退職し、42歳でコミュニティーFM局を設立。その後、2006年に教育現場に戻り、滋賀学園中学・高校校長、沖縄アミークスインターナショナル小学校・中学校長、学校法人アミークス国際学園・学園長などを経て、2019年、ドルトン東京学園中等部・高等部の参事(副校長補佐)。2020年、ドルトン東京学園中等部・高等部副校長、2022年7月から現職。

古屋 輝周(ふるや てるかね)

ドルトンX学園 高等学校 校長予定/開校準備室長

2027年4月開校予定のドルトンX学園高等学校の校長予定者。姉妹校であるドルトン東京学園 中等部・高等部の研究開発担当を兼任。Amazon JapanやX(旧Twitter)など、グローバル企業での勤務を経て、「いつか教育に携わりたい」という以前からの思いを実現するため、3年前に河合塾グループへ転職。現在は、新しい時代の学びをめざすドルトンX学園高等学校の開校準備室長として立ち上げに取り組んでいる。

*登壇者のプロフィールは2026年7月時点の情報です

ここ10年ほどのグローバル教育のトレンドを教えてください。「グローバル社会で求められる力」は変わってきていますか

「英語教育」と「国際教育」がクロスした多様な学習モデル

村田 ここ10年で目立つのは、多様な学習モデルの拡大です。インド式や英国系ボーディングスクールの日本展開、幼児期から英語環境を提供するプリスクールの拡大、国際バカロレア(IB)認定校やインド式インターナショナルスクール等の増加など、「英語教育」と「国際教育」がクロスして広がっています。背景にはアジアの経済成長や産業構造の変化、駐在員構成の変化があり、教育移住や海外カリキュラムへの接触機会の拡大が、日本側の学びの土台をつくっています。
またコロナ禍のオンライン授業を通じて保護者の意識も変わり、従来型の「詰め込み/受け身」教育への危機感や「自分の頭で考えて行動できる子」を求める動きが強まりました。

英語だけでは足りない—求められる「表現力」と「マインドセット」

安居 「グローバル」という言葉を聞くと、真っ先に思い浮かぶのは「英語が話せること」ですが「英語力があればすべてが達成できる」という単純な構図はもはや成り立ちにくくなっています。大切なのは、「自分の思いや夢、目的」があり、それを表現できるかです。留学や海外体験は、自分を問い直す機会になります。海外で「あなたは何者か」と問われる場面に出会うことで、英語力を伸ばす以上に、マインドセットを育て、「人間としてどうあるべきか」、「他者と共存するにはどうするべきか」などを考え、表現する機会になります。日本ではそこまでの文化や考え方の違いに出会えないため、海外に飛び込んで得るものも大きいです。

村田 高校時の短期留学やサマースクールはとても効果的です。外国に行けない場合でも、国内の外国人が多い観光名所(京都、広島、渋谷など)で外国人にインタビューする校外学習を設ければ、異文化との距離感やマインドセットを育てられ、越境体験としての学びは生まれます。

こうした『表現力・マインドセット重視』のニーズに学校現場はどう応えるべきでしょうか

学校は「知識の場」から「人生・探究・失敗を含む場」

安居 ドルトン東京学園中等部・高等部(以下、ドルトン東京学園)は管理の枠を最小限にし、生徒が自分で考え、挑戦し、失敗から振り返る機会を多く設けています。誰かにやってもらうのではなく、自分から動くことを前提にした環境です。生徒の思考や行動に「歯止めをかけない」広いフィールドを用意しています。

村田 ドルトン東京学園を見学した際、生徒が自らソーラーカー・プロジェクトについて積極的に説明してくれたのには驚きました。

安居 ドルトン東京学園では多くの教科で自分の取り組みを言語化して伝える機会が多いため、説明力が自然に磨かれます。ソーラーカー・プロジェクトは生徒発案で、予算がない中で理科の余剰部品を使って制作を始めました。性能向上や大会出場のために生徒自らが交渉・資金調達(クラウドファンディング等)を行っています。

古屋 文化祭では、「失敗も含めたストーリー」でプロジェクトを発表していました。海外大学志望の超進学校の生徒でも「失敗は恥」という価値観から体験を書けない例があると聞きますが、失敗や挫折を語れることが重要です。AIで表面的なエッセイを書いてしまう生徒もいる中で、「失恋」という挫折からの学びを引き出したエッセイが海外大合格につながった例もあります。海外大進学では英語力に加えて、失敗を含めた自己表現力が問われます。そのため、生徒が挑戦や失敗を経験できる機会をどのように提供し、その経験を自らの学びとして吸収・成長につなげられるよう支援するかが重要だと考えています。

安居 学校は単なる教科学習の場ではなく、「生き方」を学ぶ場であるべきです。ドルトン東京学園はそうした「育ち」を支える環境だと考えています。

今後、どのような環境が広がると考えますか

「与えられた学び」から「現場学習でゼロからつくり上げる学び」へ

古屋 最近、ドルトン東京学園を訪問したインドの生徒が、STEAM棟の最先端の設備や生徒の取り組みを見て素晴らしいと驚くと同時に、インドの探究学習のアプローチ方法の違いを指摘しました。インドでは3Dプリンターなどの機器をゼロからつくることになるそうです。生徒たちが部品からつくりあげる3Dプリンターは、既製品とは違う発想で、もしかしたらより高速に動く機器が生まれる可能性もあります。グローバル教育は「AIを使いこなす人」ではなく「AIモデルをつくれる人」「0からつくれる人」を育てる方向に向かうのではないかと考えます。

村田 農業や自然を教育に取り入れる動きもあります。何もないように見える場所に独自の豊かさがあり、それを深掘りする経験が学びにつながっています。イギリスなどでは全人教育を重視し、「教える」教育から「環境を生かして自分で感じ、自分で考える」教育へと移行しており、教師はファシリテーターの役割を担っています。

安居 工業製品は結果の見通しが立ちやすい一方、自然は不確実性が高く、そこをどう扱うかが「生きる力」の教育になります。予測できない変数に対処する経験こそが重要です。

こうした『ものづくり/現場学習』が従来の学力とどのように結びつくでしょうか

フィールドで得た観察から理論へ立ち戻るプロセスが、学力を深める

古屋 現場に学びに行くことで、学問的・実験的な裏付けが得られることを示す例があります。
ドルトン東京学園の探究学習の一環として訪れたインドでは、現地のNPOが湖の過剰栄養の問題に対して薬剤をまいて対処するのではなく、植物を使って吸収させる仕組みを採用していました。植物の構造や成分がどのように栄養を吸収するかを科学的に組み立てており、科学的な理解と実践が直結した事例です。自然を利用した解決法が、きちんと学術的・実験的に裏付けられている。こうした現場に学びに行けば、地理や生物、科学の面白さが自然とつながり、子どもたちの興味を強く引くはずです。こういう学びが広がれば、教科横断的な理解や実践的な科学力が育つ。学校の枠にとらわれない学びの場が増えることに大きな可能性を感じます。

インドで水質汚染の浄化に取り組むNPOを訪問

安居 私たちはこれまで、知識を身につけることでより高いレベルのことができると教わってきました。否定はしませんが、まず「やってみる」エネルギーが必要です。やってみて不足を自覚し、そこから学び直すサイクルこそが学びのモチベーションを高めます。ドルトン東京学園では生徒が「ありたい自分、あるべき自分を究め、学び続ける人」となるよう、教員は伴走者として支えます。先回りして押し付けることはせず、生徒の主体性を促します。

ドルトン東京学園は、探究学習を中心としたラボ、学びの地図となるアサインメント、中・高一貫の6学年縦割りのハウスを特色とした「学習者中心」の教育を実践

現場で学ぶことの価値についてお話がありましたが、新設されるドルトンX学園高等学校(以下、ドルトンX学園)では国内外の複数拠点を移動しながら行う学びが特色です。このような「移動しながら学ぶ」ことには、どのような意義やメリットがあるのでしょうか   

移動と居住の多様化が育てる“どこでも生きる力”

安居 暮らしを移す経験そのものに学びの価値があります。私自身、引っ越すたびに持ち物を減らす必要があり、物を持たないことが「豊かさ」に感じられるようになりました。学校も毎日同じ場所に通う前提をやめる。そうした場所を定めない学びは不安定な土台の上で自分の学びを築く力を求めます。「どこでも生きていける」経験を持たせたいと考える保護者も増えています。

村田 海外を見るとグローバルで活躍する人の中には、移動して経験を積み、アウェイな環境で適応して強くなる傾向があります。国内でも教育移住が広がっており、都会から地方へ移る家庭が増えています。親が意図的に子どもの環境を変えて育て直すケースも見られます。

古屋 家族で一緒に飛び込む決断は重要ですね。子どもにとって最初は戸惑いがあっても、経験を積むうちに新しい環境を楽しめるようになります。そうした変化自体が学びになります。

安居 場所が変われば優先順位も変わり、固定化された価値観だけでは判断できない場面に直面します。そのとき新しい視点や能力が求められ、それを楽しめるかどうかが問われます。

学校づくり、ドルトンX学園について

学校の内と外、国内と海外、学校と地域社会という境界を越え、社会と世界につながる新たな学校

古屋 若いうちに外へ飛び出す経験は将来の選択肢を広げます。ドルトンX学園では「現地で人に会う」ことを学びの核に据え、オンラインでは得られない共感や長期的なキャリア観を育てます。今回キャンパスとなる岩手県一関市は鬼にまつわる伝承が数多く残り、山岳信仰や自然崇拝と結び付いた独自の民俗文化が今も受け継がれているところです。周辺には同様に豊かな民話で知られる遠野や、東日本大震災で大きな被害を受けながらも復興とともに地域文化を再生させてきた釜石などがあり、民族文化や震災の記憶、そこに生きる人々の強い思いに触れることは、単なる知識を超えた学びになります。 ミネルバ大学の学生と釜石でフィールドワークを行った際、学生たちが一番刺激を受けたのは、震災からの復興に尽力する旅館の女将さんの「15年後にまた会いましょう。あなたたちは世界で活躍しなさい。そしてあなたたちが15年間やってきたことを釜石に来て話してください。私はこの街の復興に力を尽くしますから」という言葉でした。世界中から集まったミネルバの学生は優秀で、それこそ世界規模のグローバル企業で活躍する人材ですが、単なる高収入志向を超え、「世界を良くした」と女将さんに胸を張れるように「15年で何を成すか」真剣に考える契機になったのです。こうした出会いは、キャリア教育の一つの形だと感じます。国内フィールドワークでも国際教育と同等の価値があると考えています。

本校となる岩手県一関キャンパス(旧一関市立油島小学校を改装して使用)

安居 多様な背景を持つ生徒同士が集まることも大事ですね。国内外のさまざまな経験を持つ仲間から刺激を受け、互いに学び合うことで教育の幅が広がります。

古屋 どんな生徒でもさまざま豊かな体験ができるようにしたいというのが、ドルトンX学園の一つの挑戦です。長期入院や不登校などで学びが遅れても無理に「追いつく」必要はありません。多様な経験や自分のペースでの学びを重視します。回り道に見えてもそれが自分の道であり、豊かな時間になるからです。全寮制で国内外に滞在することになるので、経済的な面をご心配される保護者も多いのですが、校舎や寮は既存の空き施設をリノベーションして利用し、コストを抑えつつ本質的な体験を提供する方針です。

安居 ドルトンX学園のような環境で育った生徒は進路や大学選びを「人との出会い」や「やりたいこと」に基づいて考えられるようになりますね。学校がすべてを用意するのではなく、生徒自身が学びをつくり育てていく余白を残すことも重要と考えます。

村田 町の人と気軽に話すことで、その地域ならではの文化やおもしろさが見えてきますし、人付き合いの幅が広がります。そういう時間が原体験になります。

安居 どこに行っても「故郷が増える」感覚を持てるのが理想です。教科書では得られない「人間らしさ」が育つと感じます。

古屋 現場の「生の声」をとらえることが重要だと考えており、将来的にウクライナなどに現地拠点をつくる構想もあります(安全が確保された場合)。現地で生活する人や医師の話を直接聞けることは、医学を志す生徒などにとって非常に価値があります。医師に限らず、若いうちにそうした場に出会うことが、進路選択を考えるうえで大きな意味を持ちます。大学や学部を選ぶ前に体験しておく意義は大きいと考えます。
たとえば大学受験でも「ランキングが高いから」ではなく、そこで会った人や体験した研究、現場の思いを思い浮かべながら進路を選ぶようになります。そうすると勉強のエネルギーの質が変わるはずです。
ドルトンX学園の高校生活3年間は大きな変化があるので、一つ一つ吸収しながら楽しむマインドで過ごしてほしいですね。


Q&A|当日寄せられた質問と回答


世界の人とどうコミュニケーションをとっていけばよいでしょうか。またそのために子どもたちにどのような機会を提供するとよいでしょうか

村田 経済的に余裕があれば海外に行けることは大変有益です。しかし「世界」とは国境だけでなく、子どもの内面に広がる世界観や価値観も含まれます。必ずしも渡航に頼る必要はなく、日本国内で外国から来た人々と触れ合う機会を増やすことも、多様性に触れる有効な方法です。

安居 海外からの留学生や短期滞在者のホストファミリーを引き受けることは、子どもにとって非常に有益な機会になります。大人だと躊躇するような場面でも、子どもは自然に会話を楽しみ、異文化に触れることができます。短期の受け入れなら費用や負担も比較的抑えられ、仲良くなれば一生もののつながりが生まれ、オンラインで継続的に交流を続けることも可能です。


ドルトンのカリキュラムでは探求学習の時間が多く含まれていますが、学力は十分身につくようなカリキュラムなのでしょうか

古屋 我々は3年間の詰め込み型ではなく、地域に飛び出し、さまざまなプロジェクトで多様な人々とかかわる中で、「何を学びたいか」を明確にしていく学びのスタイルを重視しています。地域での出会いや刺激、自分で考える時間を通じて「この研究を○○大学でやりたい」という明確な目的を持ってほしいと考えています。
もちろん、学力を身につける時間は必要です。必要な学力はフィールドワーク後の集中学習で補い、河合塾グループとして入試対策も支援しますが、最後に集中して猛勉強をするためのエネルギーは、現場での経験とその間に生まれた動機から自然に湧き上がるのが理想だと考えています。

「通信制×全寮制×国内外での探究学習」を実践するドルトンX学園
ドルトンX学園高等学校は、「自らの足で探究し、破天荒に出会い、フロンティアを共創する」というめざす生徒像の実現に向け、米国ミネルバ大学の教育モデルを参考にした学びを特長としています。
同校の最大の特色である地域に飛び込んで取り組む探究学習は、高校1年次の3学期から数カ所の地域拠点に滞在して実施されます。オンラインで教科学習に、地域に出てフィールドワークに取り組みます。
1年次(1~2学期)と3年次は、岩手県の一関キャンパスと、河合塾グループが連携協定を結ぶNTT東日本株式会社が運営する、調布市の東京キャンパスに1学期ずつ滞在し、学びを深めます。